■アフリカにおける日本の存在感は

TICAD
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 TICADは、日本政府が主導して1993年にスタートした、アフリカ開発に関する国際会議だ。目的としては、開発支援の国際的枠組み作りや、国際社会の関心喚起などがある。これまでに、生産性向上「アフリカKaizenイニシアチブ」や産業人材育成(日本の大学院留学など)、電力インフラの整備といった成果を出した。開催は当初5年ごとだったが、2013年以降は3年ごと。各国首脳・閣僚、国際機関、民間企業、市民団体などが参加する。

 発展途上国での人材開発などが専門で、今回のTICADにも参加した名古屋大学の山田肖子教授は、「2000年代初めから定点観測していたが、今回は特に民間企業の参加者が多く、潮目が変わってきた。これまでは政府や大学、NGOが多かった」と振り返る。

 約810億円という額については、「TICADとしては毎回、看板になる話題を出したいはずだ」と考察する。「日本とアフリカの経済関係を強めていかざるを得ない中で、現地の人材を雇用可能にして、日本企業の現地展開をサポートすることは、最終的に日本のメリットになる」。

 また、支援に対する反発には、「白黒はっきりしたリアクションを求める世の中になっているが、21世紀は結論がつかないことにバランスを取ることが多くなるだろう。メディアには『白でも黒でもないが、長期的には日本にリターンがある』と伝える役割もある」と述べた。

 日本のODAの強みは、「非常にミクロなところで、成果を積み上げる点」だという。「トヨタ生産方式のKaizenを広めるネットワークが、各国で展開されている。理数科教育も、日本が秀でているとして、広がっている。アフリカで生産性を上げるために、日本が独自開発したコメの品種『ネリカ米』もある。ミクロでは丁寧にやっているが、それをアップスケールした議論にするのは、日本人はあまり得意ではない」。

■約810億円を投じる意味と価値は
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