将棋界の若きトップランナー、藤井聡太王座(竜王、名人、王位、棋聖、棋王、王将、23)と伊藤匠叡王(22)が激突する第73期王座戦五番勝負が、9月4日にシンガポールのセントーサ島で開幕した。シンガポール建国60周年記念の文化交流事業の一環として開催されるこの海外対局は、「将棋文化の国際的な魅力の発信と、新たなファン層の獲得」を目的としている。若き二人の天才棋士は、南国の地でどのような熱戦を繰り広げるのか。
現在のタイトルホルダーである藤井王座は、竜王、名人、王位、棋聖、棋王、王将と合わせ七冠を保持している。2023年には前人未踏の八冠独占を達成したが、2024年に『叡王』位を失い七冠となった。本シリーズでは、王座3連覇と七冠堅持を目指す。今年度の藤井王座は11勝3敗(勝率0.786)と好成績を収め、名人、棋聖の防衛も果たしている。しかし、直近の王位戦七番勝負では挑戦者の永瀬拓矢九段(32)に3連勝後、2連敗を喫しており、全棋戦を通じて約1年4カ月ぶりに公式戦での2連敗となった。藤井王座は2016年の棋士デビュー以来、500局以上戦いながらも3連敗した経験がなく、本局に敗れると初の3連敗を喫することになるため、その戦い方に注目が集まる。
一方、挑戦者として藤井王座の前に立つのは、同学年の伊藤叡王だ。伊藤叡王は2024年に当時八冠王だった藤井王座から「叡王」を奪取し、初タイトルを獲得。今年度の防衛戦も制してタイトル獲得数を2期に伸ばした。今年度の成績は15勝3敗(勝率0.833)で、現在12連勝中とまさに破竹の勢いで勝ち星を飾っている。本シリーズで王座のタイトルを獲得すれば、通算3期目のタイトル獲得となり、規定により九段への昇段を果たすことになる。今期の王座戦挑戦者決定トーナメントでは、山崎隆之九段、永瀬九段、広瀬章人九段、そして挑戦者決定戦で羽生善治九段と強豪を次々と破り、初の王座挑戦権を手にした。
注目の開幕局は後手の藤井王座が「雁木」を志向




