■顔面神経麻痺の原因・治療法は 「早期治療が重要」

 実は、顔面神経麻痺は誰もがなり得る病。年間5万人ほどが発症すると言われ、そのうち2割は後遺症が残るという。

武田耳鼻咽喉科の武田桃子院長
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 武田耳鼻咽喉科の武田子院長によると、顔面神経麻痺の原因は、ウイルス感染や免疫低下による顔面神経の腫れからくる「ベル麻痺」が68%、水痘帯状疱疹ウイルスによる神経麻痺からくる「ハント症候群」が12%、他にも「脳出血」や「脳梗塞」「脳腫瘍」などがある。ただ、要因となるウイルスの特定が難しく、ストレスも関係するため原因不明の場合もある。

 さらに武田氏は、「SHIBUKIさんのような脳からのタイプと、脳以外のタイプの2つに大きく分かれる」と話す。「耳鼻科医が診るのは脳以外の“末梢性顔面神経麻痺”で、これが全体の約9割と言われる。そのうち、“ベル麻痺”は単純ヘルペスウイルスが原因とされ、以前に感染したものがストレスや疲労の蓄積で再活性化してしまう。ほとんど症状がなく、片側だけ目をつぶれない、口から水がこぼれるなどの症状が突然起こり得る。高齢だからなりやすいわけでもなく、20代と30代、50代に好発すると言われている。もう1つが“ハント症候群”で、耳の痛みや難聴、聴覚過敏、めまいが出る場合がある」。

 主な治療法としては、ステロイド薬、抗ウイルス薬の使用が中心で、重症の場合入院による治療や手術が必要になることもあるという。麻痺が起きてからすぐの治療が必要になるため、「なるべく早い受診を」と促す。

「ベル麻痺は治癒率が高く、適切な治療をすれば9割程度は治る。一方のハント症候群は、適切な治療をしないと3〜4割しか治らないと言われる。抗ウイルス剤は発症から3日以内の投与が推奨されているので、スピードが大事だ。顔面麻痺が出たとき、脳梗塞や脳出血を心配して救急外来に行ってから、CTやMRIで『問題ない』と言われて耳鼻科に来る人が多い。しかし、そこで安心して様子を見ていると、手遅れになってしまう。発症後1週間以内をめどにしっかり治療しないといけない」

 初期対応としてやるべきことは、「すぐに耳鼻科に行く」「耳鼻科医の指示のもとに行う適切なマッサージ」がある。反対にやってはいけないのが、「顔を大きく動かす」ことだそうだ。「麻痺しているからと動かしてしまうと、炎症で断絶している神経同士が混線してくっつく場合がある。口を開けると目が閉じてしまうなど、“病的共同運動”と呼ばれる症状だ。急性期は動かさず、マッサージ程度にとどめたほうがいい」。

■「あまり構えず、普段どおり話してほしい」
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