「ひろし、ご飯よ。どうしたの? 返事して?」。自室に閉じこもった男子中学生のために毎日、部屋の前に食事を運ぶ母親。「誰かに相談しましょ」と話す母親に対し、「家の恥を晒す気か。俺たちが非難されるんだぞ。その話は明日にしよう、今日は疲れた」と、近所の目を気にして関わろうとしない父親。
「ひきこもり」をテーマにした映画『扉のむこう』(2010年日本公開)。イギリス人のローレンス・スラッシュ氏が監督・脚本を務め、献身的に世話をする家族や支援者などへの取材に基づいて製作した。
なぜ、“日本のひきこもり”を映画にしようと思ったのか。「知ったきっかけはイギリスのガーディアン紙だった。『日本特有の現象が起きている』と。ひきこもりの状態が長期にわたり続いているということに驚いた」と語る。
同じような状態の人は世界各地に存在し、今や「hikikomori」は世界の共通言語に。ただ、同じ呼び方であっても、日本と世界でその実態は大きく異なるという。
■日本は“長期化”する? 「特有の圧力、“スタンダードの物語”が求められる」
