■日本は“長期化”する? 「特有の圧力、“スタンダードの物語”が求められる」

 イタリア出身で、今は日本で精神科医として働くパントー・フランチェスコ氏は、「日本の極端な例を見ると、不登校から始まって60歳を超えるひきこもりの人がいたり、かなり珍しいと思う」と、“長期化”を特徴としてあげる。

ローレンス・スラッシュ監督
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 ローレンス監督が取材を通して日本に感じたのは、まず当事者に“寄りそう姿勢”が強いこと。食事を運ぶなど家族が献身的に世話をしたり、支援者も本人の意思を丁寧に確認する。もう1つが、「家族で何とかする」という考え。ひきこもったのは家族の責任という罪悪感も生まれ、「ひきこもり対策は長丁場になる」と無意識に思い込んでしまうという。

 また、そうした家庭内にあるさまざまな“課題”についても触れる。「多くの場合、母親がフルタイムで世話をする係になり、自分自身も孤立してしまう。“秘密裏に保つ”ことが必要なので、母と息子が共依存関係のような、トラップにはまり込んでしまっている感じがした。父親も“不在”の状態で、役割としてもそうだし、どうやって助けたらいいかが理解されていない。あまりにも仕事から圧力がかかっていて、それに一生懸命だ。日本の伝統的な家族の構成・線引きが、近代においては難しい状態になっていると思う」。
 
 パントー氏も、ひきこもり長期化の背景には日本特有の圧力、いわゆる“スタンダードの物語”が求められると指摘する。例えば、「30歳よりも前に結婚しなければいけない」「良い大学に入って良い会社に入らないといけない」などで、“売れ残り”という表現を知った時は驚いたという。また、こうした「しなければいけない」という物語に当てはまらないことで病む人が多く、周囲からの評価が行動様式につながる、“恥の文化”も関係しているとみている。

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