ある少年がいた。10歳だった少年は親に頼み込み何度も万博に足を運び「ミライのお風呂」に「人間は体洗わなくてもよくなるんや…」と釘付けになった。少年は55年後、人間洗濯機の未来を引き継ぐことになる。
設計者の山谷氏はあきらめていなかった。展示した「ミライのお風呂」は、間に合わせるだけで精一杯で満足するものではなかったからだ。改良を重ね実現化を模索したが、当時の技術では、人間の毛穴に入り込むほどの“小さな泡”を作ることができなかった。打開策として浴槽のなかに凸凹の「マッサージボール」を入れ、物理的に汚れを落とすアイデアを取り入れたが、望んでいた自動ではなかった。気付けば70代の半ば、夢は図面のなかで終わりかけていた。
しかし2025年の大阪・関西万博に最先端テクノロジーが並ぶ中、あの人間洗濯機があった。55年ぶり2度目の登場で、形も中身も進化を遂げており、名前は「ミライ人間洗濯機」。入浴体験は大人気で予約が殺到し、1日5人だった枠を途中から8人にまで増やして対応した。
サイエンスの青山恭明会長は「体をこする時代は終わる。一人でも多くの方に入っていただいたら、一生涯の思い出を作ってもらえる」と語る。同氏は55年前、何度も万博に通った、あの少年だった。
シャワーヘッド「ミラブル」の登場が鍵に
