そんな中での黙秘は、どう作用するのか。北川弁護士は「もちろん影響する。凶器があった方が直接的な証拠になるので、もし発見されれば、検察は非常に有利な証拠として提出する。逆に出せない、見つからないとなると、容疑者が被害者を死に至らしめるような動機・きっかけを持っていた可能性は十分あった。そういった細かい事情をいくつも立証証明していく必要がある。容疑者本人の供述に頼るところもあるため、弁護人としては『警察・検察に話さなくても別にいい』とアドバイスしている可能性はある」とみる。
殺人事件では、“動機”が重視される。安福容疑者は、高校の同じ運動部だった悟さんに好意を寄せていたとされるが、それが殺害の動機なのかは不明のままだ。
元裁判官の内田氏は、「殺人罪において『動機が何か』というのは、量刑を決める重要な要素だ。裁判所はできるだけ動機が何なのか解明したい。黙っているから、やましい動機があったのだろうと推認することは許されない。裁判所は実際に明らかになった客観的な経過を踏まえて、動機が合理的と推認できるか、『常識的に考えて動機はこうだ』と認定できるかを裁判員と話し合う」と解説する。
元検察官の若狭氏も、動機の解明は必要だとする。「人間が殺意を抱くのは大体、了解可能な経過をたどることがあり、『どういう経緯で、どうして彼女を殺す気持ちになったのか』その動機が、検察において一番解明しなければいけない点だ。どうして、その後の経緯が全くない中で殺害しようと思ったのか。動機の解明が大きなポイントになり、検察がどこまで真相を解明できるかが、今回の事件のポイントになる」。
「不用意な供述を避けようとしている」
