動機を黙秘する理由について、北川弁護士は「DNA鑑定で(安福容疑者が)犯行現場にいたことは間違いない。現場に首を数カ所刺されて死亡した被害者がいたということ(も間違いない)。あとは『犯行に及んだのが本当に容疑者なのか』を結びつけないといけない。そこには動機の有無や内容、容疑者の当日の足取りについて、検察・警察は詳細な供述を得たい。そこに対して、不用意な供述を避けようとしているのは、一つあるのでは」と推測する。
名古屋地検は11月14日、安福容疑者の鑑定留置を始めた。「弁護人は『精神的に異常状態だった』と主張する可能性がある。例えば、『幻聴・幻覚によってお告げがあった。だから殺害した』という話になりかねない。場合によっては精神鑑定という話にもなりかねない。そのため逆に検察は、弁護人からのそうした主張をつぶすために、是が非でも残された時間で供述してもらうような環境を整え、『なぜ時がたってそうなったのか』『犯行に至ったのか』を、彼女自らの口で、言葉で述べてもらうことがポイントだ」(元検察官の若狭氏)。
北川弁護士は「『少なくとも現在は、問題なく刑事責任能力を問うことができる』と警察・検察側が判断する。現在も大丈夫ということは、26年前も状況は変わっていないだろうから大丈夫というロジックだろう。それに対して弁護人は『現時点の精神鑑定、本鑑定をしたとしても、26年前とはまた別だ。期間が空いているため、そこで精神鑑定をしてもあまり意味がない』という反論は十分考えられる」とした。
黙秘に転じた容疑者…「報道の大きさ」も影響?
