動画に出演していた加藤弘樹さん(31)も、4年目の新人漁師だ。「ぶっちゃけイメージはすごく悪かった。周りの人からも『借金したの?』とか言われたが、実際に乗ってみたらそんなこともない。Wi-Fi環境も整い、プライベートスペースが確保されていて、問題はなかった。達成感は、釣りきって日本に帰ってきて、『これ自分たちで釣った魚だ』とやりがいが出てきた」。
いまでは幹部候補生として、中心メンバーになった加藤さんだが、初めは戸惑いの連続だったという。「ストレスや自分との戦いになり、『辞めたいな、逃げ出したいな』という時期は結構あった。−60°ぐらいある冷凍室で、寒いし、痛いし、眠いし、疲れているしが重なっていて、それが仕事の中で一番しんどかった。『1回乗ってしまったら逃げられない』みたいな。イメージは悪いかもしれないが、それが逆に『乗ったらやるしかない』みたいな」。過酷な労働環境に耐えられなくなった時、退職できるが、海の上ではそう簡単にはいかない。
鹿児島県でマグロ漁船を運営する、串木野まぐろの上夷和輝社長は、「(向かない人は)わかる。『うちの会社で本当に覚悟があるのか』をまず聞く。そこまで覚悟がないなという方は、面接しないでお断りする部分もある。必ず乗る前には、親御さんと1回面会して、会食などをしながら、『これからの遠洋マグロ漁業の幹部として、我々は受け入れて、頑張ってもらいたい』と親御さんたちにも理解をしてもらい、ますますこの業界を盛り立てていければと考えている」と語る。
しかし、そこまで入念な面接をしても、漁の途中で挫折し、飛行機で帰国してしまう乗組員もいるという。「今は『借金を作ったから返済する』など中途半端な考えを持った人はお断りしている。『やはり将来、幹部船員として、やりがいを持って働きたい』という人を募集している。そういう人には乗ってもらいたい」(佐藤所長)。
船内での年間スケジュール
