不安の中、本番を迎える──。会場は満席となった。本番直前、岡田さんは「睡魔が襲ってきよる。殴ってくれ」と話した。そして、この2年、待ち望んでいた出番がやってきた。
「おい、佐代子、佐代子」(岡田さん、以下同)
「お前が歌手になれるはずがねぇんよ、バカタレ」
「出ていけ、出ていけ。出てけ、東京へ行け。出たいんだったら出ていけ。出ていけ……」
「待ってくれ、待ってくれ、佐代子」
「戻ってきてくれ、佐代子、佐代子じゃねぇか」
「あー佐代子が戻ってきてくれたんか」
「ありがとう、ありがとう」
会場からは大きな拍手が起こった。ぼけも、老いも、できなくなることを全て受け入れた99歳。最後に残った「輝ける場所」。
観客に向けて「本日をもちまして、23歳になりました(笑)200まで生きましょう。それでいきましょう。200以上!」と語った岡田さん。
本番を終えて、菅原さんは「また次の芝居もあるので準備を始めましょう」と声をかける。すると岡田さんは「本当に寂しいね。はは。(終わった)後が寂しい……」と応じた。
そして、帰り際、手を振って見送る劇団の仲間たちに岡田さんが呼びかける。「ありがとう。ありがとう。グッバーイ。ありがとう。シーユーアゲイン、また会いましょう!」
(瀬戸内海放送制作 テレメンタリー『老いて、輝く~99歳の看板俳優~』より)
※年齢等は地上波初放送時
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