パンダは日中友好の象徴とともに、「安全保障の象徴」とも言われてきた。1972年の日中国交正常化でパンダは初来日し、カンカンとランランは大人気になった。中国への経済支援を打ち出した大平政権の1980年には、ホアンホアンが来日した。

 一方で、靖国神社参拝で中国との関係が緊張した中曽根政権(1982〜1987年)や小泉政権(2001〜2006年)では、パンダの来日がゼロだった。中国との改善を図った宮沢政権(1992年)には、上野にリンリンが来日。社会党の村山総理が誕生(1994年)すると、和歌山に永明と蓉浜の2頭がやってきた。

 日中国交正常化30周年の気運を盛り上げた森政権では、神戸に2頭(興興、旦旦)、和歌山に1頭来日(梅梅)。尖閣諸島問題で民主党の菅総理が逮捕した船長を釈放した翌年には、上野に2頭(リーリー、シンシン)来日した。ちょうどその頃、GDP世界第2位を42年維持してきた日本が、中国にその座を奪われた。

 そして第2次安倍政権以降、日本にやってきたパンダはゼロだ。因果関係は明らかでないが、結果として日中関係とリンクしているように見える。

 ジャーナリストの青山和弘氏は「高市政権で日中関係は、過去とは違う新たなフェーズに入った」と指摘する。高市早苗総理の「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうる」との発言を発端に、日中関係は再び悪化している。

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