そもそもレーダー照射とは何なのか。元航空自衛隊1等空佐の朝長雅彦氏に話を聞いた。朝長氏は1986年に自衛隊入隊後、26歳で主力戦闘機F-15のパイロット資格を取得し、46歳まで活躍した。

「スクランブル待機所というものがあり、そこに24時間詰めているパイロットがいる。ここに『今どの方向から、どういうと思われる軍用機が南下している』と一報が入る。指令を受けたパイロットは、5分以内に飛び上がらなければならない」(朝長氏)

 朝長氏によると、レーダー照射には機体の「捜索目的」のものと、標的をロックオンする「火器管制」に分かれ、今回のケースは照射されたとする時間から“ロックオン”ではないかと見る。「F-15であれば『自分の味方が今ロックオンした』と表示される」。

 ロックオンされると、その脅威度によって異なる音が出て、パイロットに知らせるという。「ロックオンされたら、まずは回避動作を行う。ミサイルが当たらないであろう、もしくは撃たれても速やかにミサイルの有効射程・有効範囲外に出られるであろう軌道を取る。ものすごい緊張感と緊迫感、時には恐怖心を持ってやっている」。

 あくまで捜索目的だとする中国側は、「事前に通告した」と音声データを公開し、責任は日本側にあると主張する。対する小泉防衛大臣は「訓練を行う時間や場所の緯度経度を示すノータム(航空情報)もなく、船舶等に示す航行警報も事前に通報されていない」と説明している。

 レーダー照射を受ければ、その記録は残るというが、それを公表しないのには訳があると朝長氏は推測する。「レーダー照射を受けたという物的または電子的な証拠は、ちゃんとあると思う。機材に関しての情報等を詳細に公表することは、その機材等の性能を公表することになる。具体的な情報の公表は、極めてシビアにコントロールされていると思う」。

なぜ中国は危険な行為を行ったのか
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