■アメリカによるイランへの攻撃は成功だった?

イランへの空爆
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 アメリカの戦略的背景に詳しい、保守系シンクタンク「ハドソン研究所」研究員で、東京国際大学准教授の長尾賢氏は「作戦はうまく行っている。アメリカは昨年の段階で、イランへの攻撃を決めていたと見ている」として、そこには「北朝鮮の事例がある」と説明する。

 「北朝鮮の核開発を阻止すべく、軍事作戦を行うか迷ったが、最終的に外交で解決した。しかし北朝鮮は、こっそり核開発していた。これをイランで繰り返すわけにはいかない。能力を破壊しても、意思がしっかりしていると、いつか核を持ってしまう。根本的に解決するには、核開発しない政権にするしかないと、準備を進めてきたのだろう」

 タイミングは「1月の反政府デモには間に合わず、準備が整ったため現在に至った」とする。「最初に指導部を排除するなど、作戦が迅速に進んだ。相手へ正確に当てられるのは、正確な位置情報がわかっているからだ。それを把握する人員をAIで代替したことで、従来の2倍の規模になった。AIを使うことで、効率だけでなく、規模も大きくできる」。

 ペルシャ湾岸地域の安全保障に詳しい「中東戦略研究所」代表の村上拓哉氏は、「トランプ政権になってから、イランとアメリカはオマーンを介した交渉を6回やってきた。トランプ氏は交渉で、イランの核保有を止められると信じていたのではないか」と考えている。「しかしイランが弱体化し、いま軍事攻撃を仕掛ければ、よりよい核合意ができると動いた。イランの核保有が、本当に『切迫した脅威』だと信じている人は、トランプ政権内にいないだろう」。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「アメリカ国防省も『イランがどこかを攻撃する予定があったのか』との問いに、『そんなものはない』と答えている。今やる必要がなく、戦略ミサイル開発なども聞かないため、選挙対策が大きいのでは」と考える。

 これにカリフォルニア大学バークレー校教授の野村泰紀氏は、「アメリカでは、みんなエプスタイン文書の方を気にしている。またコアな支持層の“MAGA”も『中東に関わっている場合じゃない』と離れている。MAGAが離れるのはわかっていたはずで、おそらくイスラエルからの説得が大きかったのだろう」と返す。

 一方で長尾氏は、「選挙やエプスタイン文書が理由とは見ていない」と反論し、その理由として「イランは2024年12月の段階で、ウラン濃縮を60%まで行っていると、IAEA(国際原子力機関)が伝えている。民生用では3〜5%でよい。核弾頭は90%以上に濃縮して作られるが、20%以上でも核兵器はできる」と語る。

 そして、「準備していたのは間違いない。ミサイルは7〜8年かかるとも報じられているが、国家が本気になって隠すと、進行していても表に出ないこともある。『時間があるのに早く攻撃しすぎだ』との指摘はあたらない」とした。

 これに村上氏は「高濃縮ウラン保有の事実は、公表されていた。イランはオバマ政権と結んだ核合意を復活させたかった。しかしトランプ政権で、アメリカが一方的に制裁を再開してしまったために、交渉カードとしてウラン濃縮を続けてきた経緯がある。IAEAも『イランに核兵器開発の兆候はない』と声明を出している」と補足を加えた。

■最高指導者も死亡、その先は
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