■今は「6合目」、2040年代の実用化は「勝算30%」
研究の歴史は長いが、実用化のフェーズとして東氏は現状を「6合目」と表現する。人類はすでに1億度を作ることも、反応を起こすことも可能にしているが、最大の壁は「パッケージ化」にあるという。東氏は現在の状況をモータースポーツに例えて説明した。
「正直申し上げて、最近まで『夢の技術』だと思っていたが、しっかり勉強したところ、これは着実に前に進んでいる。イメージで言うと(特別な車である)F1カーはできるが、まだ(一般に利用する)乗用車を作るには至っていない。一瞬、高速で走れるものは作れるが、頻繁にタイヤを交換したり修理が必要になる。それを普通に日常走れる車にしていくことを目指す。その『乗用車1号』を誰が世界で最初に作るかということだ」。
世界に目を向けると、アメリカは民間主導、中国は国家主導、ヨーロッパは国際共同プロジェクトと、三者三様の開発体制をとっている。日本はこれまで国際的な実験炉「ITER(イーター)」において重要な技術を提供しており、東氏は「この蓄積が現時点では日本が世界で一番ある」と客観的な優位性を強調する。
しかし、産業として勝つためには技術力だけでは不十分だ。かつての半導体産業のように技術で勝ってビジネスで負ける歴史を繰り返さないために、東氏は「標準化」や「法整備」の必要性を訴える。
「例えば標準化や規格化をいかに早い段階から組み込んでいくのか。同じく原理的な平和を希求する国々とどうやって有効活用していくのか。重要な論点としては、日本でこれだけホットな議論になってきているのにも関わらず、核融合に関連する法律は1本もなく、法の定めがない。これは相当遅れている。この技術が分かりつつも、社会に接続することを担う人物が圧倒的にいなかった。そこを私は担っていきたい」。
実用化の時期について、東氏は「2040年代前半」という展望を示す。成功する勝算については「30%ぐらい」と冷静に見積もるが、それは決して悲観的な数字ではない。失敗が許されない国際プロジェクトとは異なり、民間企業がリスクを取って無数のチャレンジを繰り返すことが、突破口になると考えている。
「民間主導であれば、ある程度は進んでいく時に失敗ができる。国税を使うために絶対に失敗できない国際プロジェクトとの違いは大きい。民間がリスクを負って、無数の失敗やチャレンジがこれから世界中で生まれていく。(成功への)崖は厳しくなっていくが『登る』というよりは『よじ登っていく』ということ」。
生成AIの普及により爆発的に増大する電力需要に対し、核融合技術の輸出は強力な経済的武器にもなり得る。日本が技術の力でエネルギーの覇権を握り、真の平和を実現できるか。
(『ABEMA Prime』より)

