自民党内の「思想的温度差」と参議院を説得する秘策
青山氏が歴史をひもときながら、背景を解説する。「自民党の党是ではあるが、全員賛成しているかというと、そうではない。自由民主党は『自由党』と『民主党』がくっついてできた。そして“自由党系”と“民主党系”の大きな2つの派閥の流れが、今の政治にも残っている」。
流れとしては、「自由党系は吉田茂元総理、民主党系は鳩山氏や岸氏で、憲法改正に熱心なのは民主党系だ。岸氏は安倍氏の祖父。中曽根氏もどちらかと言えば民主党系で、自主独立を目指す意向から、憲法を改正したい」と説明する。
一方で、「吉田氏といえば『吉田ドクトリン』という言葉があるが、日本は自分で防衛をするというのは横に置いておいて、経済を重視しようと。だから最初は自衛隊を作るのにも慎重だった。大平派・宮沢派の宏池会、田中派・竹下派・小渕派の流れは、こちらだ。そうした派閥から総理が出ている時は、『憲法改正より経済だ』となり、あまり進んでこなかった。今でも自由党系と民主党系では、温度差が残っている」のだという。
元自民党衆議院議員の宮崎謙介氏は、「今までいろいろな人がトライしてきて、安倍氏でもできなかった。高市総理の今の状況は、もう一歩の所まで、今までで一番進んできた状況になっている。党内の議論を聞いても、護憲派は結構声が大きかったが、前のめりの議員がだいぶ増えてきた。『発議まで行くのでは』という見方をする議員が増えており、今年はひょっとしたらひょっとするかもという空気感ではある」と指摘。
この見立てに、青山氏も「十分あり得る」と反応する。「連立相手が維新になり、連立与党の中は前向きになっている。公明党というブレーキ役がいなくなった。衆議院では自民単独で3分の2を超え、国民世論も選挙でわかったので機運は高まっている」。
しかし「問題は参議院。参議院の議席は変わっていない。3分の2になるには、自民・維新に国民民主党を足してもダメ。まだ中道に合流していない公明党まで足せば、ちょうど166議席だが、公明党の理解を得るのは相当ハードルが高い」といった現状もある。
とはいえ、「緊急事態条項と合区解消の2つだけでやったらどうか」という案もある。「合区解消は参議院の悲願だ。今、参議院選挙では“一票の格差”問題で徳島・高知などが2県で1人になっている。参議院としては1つの県には最低1人の議員がいてほしいという理由で、参議院をなだめながら、緊急事態条項と併せてやろうと言っている」。
そして、青山氏は「ただ、憲法9条を今回棚上げするのはどうなのか」と問いかける。これに宮崎氏は「9条なしの改憲は気持ち悪い。いずれにせよ、憲法9条に触れないことはないだろう」とコメントした。
青山氏は「トランプ大統領のアメリカにもなかなか頼れないのではという状況で、『自衛隊の存在をしっかり書き込むべきだ』との要請は強まっている。そんな中で、最初の憲法改正が緊急事態条項と合区だけでいいのかには、まだ議論もある。ただし現実的に、高市総理が言うように来年発議の環境を整えたいのなら、そちらの方が楽なのは間違いない」と語る。
宮崎氏が党内事情を明かす。「自民党内の参議院が壁になっているという話がある。緊急事態条項で『災害などの際に、衆議院が解散しなくていい』となると、今の憲法上で有事には参議院が代わりをやる。自分たちの存在意義がなくなる。党内でも参議院側がブレーキをかけているという議論がある中で、どうまとめていくのか」。
このような事情から、青山氏は「だから合区とセットにすることで、参議院にも理解してもらおうとしている。そこがうまく行くか。まだいろいろなハードルがある。“憲法改正”と一言で言っても、何をどう変えるかで賛否は変わる。各党がどうなるかも含めて、まだまだ難しい調整が必要だ」と話す。
与野党のスタンスはどうなのか。「この前の選挙で、維新は微妙だったが、参政や国民、日本保守党など含めて、改憲勢力が圧勝した。中道やれいわ、共産、社民はかなり厳しかった。高市総理が『時は来た』と言うのは、そうした世論の雰囲気もある。ただ、参議院のことを考えれば、中道、特に公明党の協力も得なければいけない」。
加えて、「国民投票になったときに、野党が大反対している中で、本当に国会で押し切っていいのかという問題が出てくる。そこをどう判断していくか。ただ、全員が賛成しての発議はあり得ないため、高市総理がどこで踏み切るかが焦点になる」とする。
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