トランプ氏vs習近平氏、米中首脳会談の勝者は?台湾問題をめぐる中国の裏の顔とは?国際政治学者が両国の本音を解説

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米中首脳会談について国際政治学者が解説

 今回の会談について、舛添氏が解説する。「非常に低い評価。お祭り騒ぎだけだった。大歓迎して、大晩餐会をやり、天壇公園を見て、実質的に何が決まったか。例えば世界中の人が一番困っているのは、ホルムズ海峡だ。石油が来なくなり、日本も全部値上がりして、物がない。トップ2人が話して、『やめさせる。今日で終わりだ』と、なぜ言えないのか。何にもない。『何のためにやったのか』が、私の極めて厳しい評価だ」と手厳しい。

 9年前の会談と比較して、「力関係が全く違う。論外なぐらいに差が縮まっている。GDPを見ると、どんどん中国が増やしている。もちろん差はあるが、この趨勢(すうせい)が続くと(中国が強くなる)。ちなみに日本はドル換算で名目GDPが減っているため、相手にされない、みじめな状況だ。(中国は)軍事費も伸ばしている。同じお金をかけても、中国の方が安く物を作れれば、戦闘機の数も増える。ものすごい勢いで軍拡をやっている。空母艦も今、4隻目を作っているという。アメリカは確か11隻だ」と、国力の変化を示す。

 なぜ天壇公園に案内したのか。「キッシンジャー氏が来た米中国交回復ゆかりの地だ。前回メラニア夫人と来た時には紫禁城を見たため、次に何か見るとなると天壇公園。だが、もっと大事なのは中南海に行ったこと。中南海は中国共産党の皆が住んでいる権力の中枢だ。私も副首相と話す時に呼ばれたことがあるが、普通は入れない。トランプ氏が『ここに首脳が来たことあるのか』と聞き、『まれにしか来ない』と答えると、『俺は特別だ』と喜ぶ。前回は連れていってもらえていないため、世界遺産の見学よりも大きい」。

 1本目の勝負、貿易・経済の成果については「一応は協力しようと、互いに物を買う。中国は『関税を止めてくれ』と言い、アメリカは『市場を開放してくれ』と言う。だが、(中国はアメリカの)最先端技術だけが欲しい。NVIDIAのファンCEOを連れていったが、最先端技術がもらえるのか。それはAIなどで必要。先端技術をもらえば、もう中国は電気自動車でもドローンでも勝っている。AIの一番いいところだけ欲しいということだろう」と予想する。

 その他の貿易は「大豆を買うのは、毎回そうだが、アメリカの農民の票を得るために、『俺が言ったから、売れてもうかっただろう』と言うためだ。ボーイングは最初、500機や750機と言っていたが、200機しか約束できず、ボーイングの株が『予想以下だ』と下がった。『何月何日に何機導入する』というわけではないため、途中で消える可能性もある。『いろいろなものを買ってもらった』と言うが、本当にトランプ氏が勝ったのかは疑問だ」と考える。

 2本目の勝負である「イラン情勢」については、「ホルムズ海峡を早く開けなさいというのは、中国も輸入している石油の3分の1は、ホルムズ海峡経由のため、やってもらった方がいい。ただ、中国のタンカーだけはイランに通してもらっている。他のルートもいろいろあり、日本よりは困っていない」のだという。

 また「『通行料の徴収はやめよう』は当たり前。備蓄も相当にあり、石炭も使い、他の手でいろいろ入手しているため、日本ほど石油で困っていない。本来ならば、イランに対して圧力をかけられるはずで、習氏は『早くやめろ』と言える。しかし言わずに、『武器をどんどん消耗してくれれば、こちらが台湾侵攻するときに、アメリカは来られないだろう』という話が念頭にある。一番困るのはアメリカの台湾援助。ここで武器を使ってしまえばなくなる。そういういろいろな思惑もある」とも解説する。

 3本目の勝負は「台湾問題」だ。「核心的利益は『中国は1つであり、台湾の独立を絶対に許さない』ということ。2025年11月の高市早苗総理の国会答弁から、日中関係はずっと悪いままだ。『台湾は別の国』のニュアンスで取られてしまい、これは絶対に許さない。観光業界などは困っていても、半年たっても改善しようとしない。それぐらい怒っている」。

 つまりは「習氏にとって、残っている課題は台湾だ。経済が勝ってきて、自分の独裁権力も持っている。『台湾統一が自分の最後の仕事だ』と。来年もう1期やるだろうが、その時に絶対それだけはやる」という見通しだという。

 そして、「『(台湾への)武器輸出をやめろ』と言っているはずだ。『やるかどうか考える』とトランプ氏が言ったのは、相当厳しく言われたのだろう。この話が終わる前に、中国の国営放送は『習氏がかなり厳しくトランプ氏をやり込めた』と流している。国家を挙げた大宣伝だ」と話す。

 しかしながら、本音では「中国にもいえない事情」があるという。「台湾を今、武力侵攻できない。人民解放軍がガタガタになっていて戦えない。なぜかというと、トップ全部の首を切っている。5月7日には、国防大臣経験者2人に執行猶予付きの死刑判決が出た。驚いたのは、1月に張又侠氏と劉振立氏というトップのトップが失脚したことだ」。

 張氏は中央軍事委員会の副主席で、「主席は習氏で、ナンバーツーが失脚した。中央軍事委員会は7人からなり、習氏はもちろん入っている。あとは規律委員やるぐらいの軽い人2人しか残っていない。2025年6月には、非常に重い役割だった苗華氏と何衛東氏がいなくなった。つまり人民解放軍で実戦経験のあるトップがいなくなり、今『台湾を攻める』と言っても攻められない」と語る。

 米中首脳会談の「3本勝負」を総括すると、「完全に習氏の勝ち。1本目の勝負で、一応『物を買ってもらう』と言ったが、全くトランプ氏が有利になっていない。秋の中間選挙で勝てるかというと、全くプラスになっていない」と結論づける。

 舛添氏が指摘した民主主義の弱点を今後の外交日程から解説する。11月18〜19日にAPEC首脳会議、12月14〜15日にG20首脳会議が予定されている。だが「今のまま行くと、中間選挙で負ける可能性が強い」といい、「もし負ければレームダックだ。政権が使い物にならなくなる。APECやG20で使い物にならなくなり、2年で消え去るような相手と話してもしょうがないとなる。習氏は消えず、もう1期くらいはあるだろう」と推測する。「選挙がある国が弱い。中間選挙で勝てば別だが、片一方には選挙がない」。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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