■認知症患者からハラスメントを受け続ける看護師たち
株式会社ケアコムの「2026年 認知症患者からのカスタマーハラスメントに関する実態調査」によると、認知症患者からハラスメントを受けた経験の頻度について、看護師の26.9%が「ほぼ毎日」、27.7%が「週に数回」と回答しており、4人に1人が日常的に被害に遭っている実態が浮き彫りとなった。
ハラスメントの具体的な内容としては、「暴力」が88.2%、「暴言」が83.2%に上り、次いで「セクハラ」も56.7%に達している。厚生労働省の推計資料によれば、日本の認知症高齢者数は2040年には584万人に達すると見込まれる一方で、同年の介護職員は約57万人が不足すると予測されている。
看護師の稲葉さんは、認知症患者からの暴力と病院側の対応に悩み、適応障害となって転職を余儀なくされた当事者の一人だ。
自身の被害について、「患者さんの処置やケアに介入しているときに、相手の方が興奮状態であったり、混乱して抵抗した際に、顔や頭を蹴られた」と振り返った。また、日常的な病棟の状況についても、「常に病棟にはそういった暴言、暴力のリスクがある患者さんというのは1人以上いた印象。他にも病院を脱走した患者さんに、首を締められたスタッフもいた。処置の度に腕を掴まれたり、叩かれたりすることは珍しくはなくて、自分も気づいたら身構えながら働くのが普通になっていた」と語った。
被害は稲葉さんだけでなく、周囲のスタッフにも及んだが、勤め先の病院では看護師へのケアが期待したものではなく、さらに精神的に追い込まれた。
稲葉さんが主治医に高圧的な態度や脱走を繰り返す患者について相談した際、「『認知症だから仕方ないよね』であったり、『誰かが殴られたら退院調整がしやすい』と言われた」と告白。この言葉に対し「誰かが傷つかない限り動いてもらえないのかなと思って、心が折れてしまった。そのような環境で働き続けることに不安を感じるようになって、職場に足が向かなくなった」と述べ、組織の無理解が適応障害や離職の決定的な要因になったことを指摘した。
■病院は看護師を守れるか
