出頭した人物は「依頼者」も「被害者」も知らなかった
そして実行役を集めたのが、最初に出頭してきた平山被告。出頭した当初、警視庁にこう語っていた。「(殺害を)指示したのは兄貴分です」「名前は言えない」。
実はその時、平山被告は自分に指示を出した人物しか知らなかった。さらにその上に誰がいるかも知らず、犯行に加担していた。そしてさらに、殺害された夫妻の顔も知らなかった。
実は、この出頭には裏があった。自分から交番に入る30分前、平山被告は共犯者と会っている。
2週間前に時計の針を戻す。埼玉・越谷市のアパート、昼間は建設現場に出る仕事をして、夜は渋谷のクラブに通う。宝島さん夫妻とは面識がなく、上野の店にも行ったことがない。
その男の携帯に、1本の電話がかかってくる。かけてきたのは、クラブで知り合った佐々木光被告(当時28)。「運んでほしいものがある。金は出る」「それだけだ」。
平山被告は「最初は遺体の処分だけを引き受けたつもりだった」という。誰の遺体なのかも、誰が頼んでいるのかも聞いていない。その数日後、再び佐々木被告から連絡があった。「話が変わった」「殺すところから、頼みたい」「その分、金も上がる」。その後「報酬が増額され殺害も指示された」と話した平山被告が知っていたのは、この男までだった。
平山被告は自分の下、つまり指示で動く実行役を探した。「普段からけんかっ早い。怖いものを知らない雰囲気があったから、2人に依頼した」。選ばれたのは2人の当時20歳の男、姜光紀被告と若山耀人被告だ。平山被告によれば、上下関係のない飲み友達だったという。
平山被告の「車で、運んでほしいものがある」「数百万にはなる」との声かけに、姜被告は「やります」と答えた。しかし後に平山被告は「運ぶだけじゃなくなった」「殺してから運ぶ。金は上乗せする」「相手は50代の夫婦だ。女のほうは髪が長い」と依頼を変えた。姜被告は「やらなかったら何をされるか分からないと怖くなり依頼を受けた」と話している。
同様に平山被告は「頼みたいことがある。やれば、金が入る」と、若山被告に打診。「ちょっと考えさせてください」との反応に、「今、決めてくれ」と要求。若山被告は「やります」と返した。
準備も平山被告がした。4月13日の夜、越谷市のホームセンター。買ったのは携行缶と着火剤。その30分後、同じ越谷市内のガソリンスタンドで、携行缶にガソリンを入れている。
翌日の夜は、東京・上野の量販店。結束バンド、粘着テープ、そして延長コードを購入した。「ロープ売り場が見つからなかったので、電気コードを買いました」「首を絞めるためには、ロープが必要だろうと思って」「何に使われるかは、なんとなくわかっていました」。
殺害する相手の顔を知らないまま、道具を選んでいた。そしてこの夜、平山被告がいたのは、夫妻が毎日集金などで回っていた、あの通りのすぐそばだった。
経営方針めぐり対立、他店ともめたことも
