■働き手の立場が弱すぎる?
個人への分配が進まない背景として、各専門家は日本の労働市場の硬直性に問題を見出した。
柯氏は労働組合の機能不全を指摘する。「30年以上日本で働いてきたが、やはり給料は上がらない。ストライキでも何でもやらないと労働分配率は上がらない。なぜ労働生産性が上がらないかをきちんと検証しなければならない」と述べた。また「日本では成果主義を徹底的に導入している会社がほとんどない。ハーバード大学の教授は年収5万ドルから40万ドルまで差があるが、日本の大学教授は定年まで一律に近い。こういう横並びの仕組みを打破しない限り、いくら政府が給料を上げろと言っても無理だ」とも語った。
アトキンソン氏は転職文化の欠如を挙げる。「海外では気に入らなければ辞めて違う会社に行くのが一般的。日本の転職率は1割程度だが、アメリカは毎年3分の1が辞める。流動性が高いからこそ給料が上がる」と説明する。また安価な労働力に依存する一部の企業の姿勢 について「安くこき使える日本人がいなくなってきたのに、ビジネスモデルを変えようとせず、『安くこき使える外国人を入れてくれ』という発想になっている」と企業経営の姿勢を批判した。
横浜市立大教授の鞠重鎬氏は、韓国との比較から日本の特殊性を浮き彫りにした。「日本では10年以上同じ職場で働く割合が45%程度なのに対し、韓国は21%程度で流動性が高い。経済学では賃金は生産性によって決まるはずだが、日本では一律に横並びになりがちだ。韓国のサムスンやSKハイニックスでは労働者の力も強く、ストライキなどで主張する。一方で日本の労働組合組織率は16〜17%にとどまり、個人が経営者に主張すると、出る杭は打たれる環境にある。この牽制する力が働かないことが、経営側のやりたい放題を許している」と指摘した。
全日本インド人協会会長のプラニク・ヨゲンドラ氏は、スキル教育の欠如という観点から問題を捉える。「日本人が転職しない一因は、履歴書に書ける強いスキルがないことだ。インドやアメリカでは大学を出るときに専門分野がある。しかし日本では歴史や地理を専攻した人が銀行に入ってきて、そこから業務を学ぶ。最初から会社を学びの場と捉えて入社している。さらに企業の社内研修への投資も縮小し続けており、スキルのない外国人労働者が入ってくることで、状況がさらにあやふやになっていく」と語った。
モンゴメリ氏は若者の負担について、「若者は人手不足で就職はできても、賃金が低すぎる」と指摘する。さらに「財政拡大の負担を担うのは若い世代だ。政治が年配者の方を向きすぎている」と懸念を示した。
ひろゆき氏は、若者が将来の負担を実感しにくい構造を指摘する。「若い人たちも、自分たちが損していると実感があまりない。なぜなら負担が増えて払い始めるのはこれからだからだ。本当に困っている人が実感を持てないので、そこに負担を寄せるのは短期勝負では正解になる。長期を考えない政策だが、1年間だけうまくいくならこれがいいと考えれば、それなりにうまい政策をしているとも言える」と語った。
プロデューサー・若新雄純氏は労働者側の意識にも目を向ける。「新卒で入る若者には高い・低いの基準も存在しない。キャリアも積んでいないのに給料を上げてほしいと交渉すること自体がはしたないという雰囲気の中で育ってきている。だから給料よりも安定的に所属できるかを重視してしまい、解雇しづらくなって流動性もなく賃金も上がらない。所属か契約かという議論をぐるぐる繰り返している」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)

