持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の1回戦(三番勝負)が6月30日に放送され、木村一基九段(46)が中村太地七段(31)に2-0のストレート勝ちを収め、準決勝進出を果たした。木村九段は予選ブロックから無傷の6連勝を飾った。
粘った先に勝ちがある。「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持つ木村九段が、苦しいながらも存分に持ち味を発揮して、タイトル経験もある中村七段を退けた。「まず1回勝つことができれば」と戦前に語った第1局、中村七段の鋭い攻めの連続に耐え続けた。受けながらも、徐々に自玉を広くするという巧みな指し回し。攻められるほど安全を築き、攻めのターンが回って来たところで、一気に中村玉を斬り落とした。
第2局では、さらに苦しい将棋になった。対局後「(採点は)60点。大きなミスが出ましたので」と反省したが、それでもプロ棋士が指し慣れない超早指し棋戦に「何が起こるかわからないということで、最後まで指し続けたのが何よりの勝因」と粘りに粘った。プロ棋士として脂が乗る時期の中村七段に対して、40代の木村九段が2連勝。この結果に解説を務めた同じ40代の久保利明九段(43)も「40代でここまで頑張っているのはすごい」と脱帽した。
準決勝では、前回優勝者・藤井聡太七段(16)と増田康宏六段(21)という、東西の天才棋士と呼ばれる2人の勝者と対戦。「どちらが来ても、かなりきつい相手です。2人いっぺんにかかって来るわけではありませんので、楽しみに待ちたいと思います」とコメントの内容以上に、超早指し棋戦の手応えと自信をにじませていた。
敗れた中村七段のコメント 上に行けなかったというのはとても残念なところではあります。純粋に楽しく指せましたし、また自分に足りないものとかも、かなり多く見えた期間でした。(次回出場は)ぜひ出させていただきたいですけど、それまでに将棋の実力はもちろん、このルールに適応した指し方っていうのを、もうちょっと工夫して研究して臨めたらなという風に思います。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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