将棋の最年少棋士・藤井聡太七段が7月19日、17歳の誕生日を迎えた。2016年10月に、史上最年少の14歳2カ月で四段昇段、プロ入りしてからというもの、数々の記録を樹立し、将棋界に新たな光を当て、景色を変えた天才だ。デビュー当初は、インタビュー時にも言葉を探して苦労していた様子も見られたが、今ではだいぶ慣れてきた。そんな藤井七段の17歳時点での記録が、どれほどのものか。改めて過去の天才棋士、2人と比較をしてみた。
比較したのは史上初の中学生棋士として、14歳7カ月でプロ入りした加藤一二三九段(79)、同3人目で15歳2カ月プロ入りの羽生善治九段(48)。藤井七段が最も若くプロ入りしていることから、17歳の時点でのプロ歴は最も長いことになる。既に3年近いキャリアにもなるわけだが、その戦績は突出していた。
◆17歳の誕生日時点での通算成績
加藤一二三六段 58勝21敗 勝率.734
羽生善治四段 72勝22敗 勝率.766
藤井聡太七段 131勝22敗 勝率.856
なんといっても対局数、勝利数、勝率が違う。将棋の世界は順位戦のようなリーグ戦を除き、基本的にはトーナメントを勝ち上がっていくことでタイトルへと近づいていく。デビュー直後であれば(一次)予選からのスタート。勝ち進めば、本戦からのシード棋士よりも多く対局することになる。藤井七段といえば、なんと言ってもデビュー直後からの29連勝が象徴的だが、それ以降でも102勝22敗と勝ちまくっていることがよく分かる。
勝率においては、いくら実力差はあれど、そこはプロの世界だけに通算勝率8割超など、奇跡のような数字だが、藤井七段は.856。大雑把に言えば、7回に1回しか負けない。ペースで言えば、年間に40~50局指す中で、負けるのは6~7回。2カ月に1度、藤井七段が負けるという“珍しいシーン”を見る、という状態にすらなっている。
◆17歳の誕生日時点での順位戦、棋戦優勝
加藤一二三六段 B級2組 六・五・四段戦
羽生善治四段 C級2組 若獅子戦
藤井聡太七段 C級1組 朝日杯将棋オープン戦(2回)新人王戦
前期のC級1組で、惜しくもB級2組への昇級を逃した藤井七段だが、順位戦においては大先輩・加藤九段の記録がとてつもない。何せC級2組、C級1組、B級2組、B級1組と、すべて1期抜けを果たしてA級まで駆け上がったのだから、まさに「神武以来(じんむこのかた)の天才」といったところだ。また、全棋士参加の棋戦優勝については、17歳0カ月で、高松宮賞争奪選手権戦で優勝を果たした。藤井七段は朝日杯将棋オープン戦を連覇しているが、加藤九段もこれに匹敵する結果を出していたことがわかる。
後に七冠独占、永世七冠、通算最多勝などの記録を樹立する羽生九段だが、順位戦C級2組の1期抜けはならず、17歳はC級2組で迎えている。ただ、2カ月後には天王戦で優勝。実質的なデビュー年度であった1986年度には新人賞と勝率一位賞を獲得し、既に頭角を現していた。周囲と比べれば十分に突出した成績だったが、後の活躍を考えれば17歳時の羽生九段は、成長真っ只中だったのだろう。
今後の藤井七段に期待される記録は、なんといっても最年少でのタイトル挑戦(17歳10カ月)、タイトル獲得(18歳6カ月)。羽生九段は以前のインタビューで「(藤井七段は)朝日杯も連覇してますし、いつそういう舞台に出ても全くおかしくないですね。ただ、他の棋士も強い人がいっぱいいるんで、やってみないとどうなるか分からないですが」と答えている。
現在のタイトルホルダーは、豊島将之名人(29)を筆頭に、8つのタイトルのうち4つを20代が保持。30代の広瀬章人竜王(32)、さらには渡辺明三冠(35)と、誰の名前を挙げてもその壁は厚く、高い。この壁を越えることができるか。藤井聡太・17歳の夏、その成長ぶりに注目が集まる。
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