日本の読解力低下=“考えが違う人”との議論少ない? 若新雄純氏「立体的な思考が必要」
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 経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに15歳を対象に行っている、「学習到達度調査(PISA)」。その2018年度の結果が、3日に発表された

 日本は「数学的リテラシー(6位)」「科学的リテラシー(5位)」の分野では世界トップレベルだが、「読解力(15位)」は順位・平均点ともに大幅に低下。文部科学省も「判断の根拠や理由を明確にしながら自分の考えを述べることなどについて課題がみられる」と危機感を示した。

 今回の結果について、フィンランドなど世界各国の教育現場を取材してきたジャーナリストの増田ユリヤ氏は次のように話す。

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 「読解力は順位も下がっているが、点数から見ても力が落ちていることが読み取れる。今はすごく便利な世の中で、子どもでもスマホを持っていたり、情報をさっと調べることをすると思う。(情報を)キャッチする能力は高いとしても、複雑な文章の中からじっくり考えて、そこから正しいこと正しくないことを読み取るということを普段からしていないと思う」

 また、読解力の低下は、学習能力だけではなく今を生きるのに必要な情報処理能力の低下だとも指摘する。

 「フェイクニュースみたいなものが出てきた時に、それを真に受けて拡散してしまう。事実かどうかを疑ったり自分で考えたり、判断したりという能力が低いということが(PISAの結果から)読み取れる部分があると思う。そういったこと一つひとつが、他人との考え方の行き違いになったり、正しいことを判断できなかったりということになると、勉強だけではなく生きていくうえですごく深刻な問題になってくる」

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 では、読解力を養うためにどのようなことが必要なのか。増田氏は「私自身は紙の本を読んだり、『面倒くさいこと』をすることが大事だと思う。人とコミュニケーションを取ることをもっと大事に考えていくことが必要」だとの見方を示した。

 今回の調査に参加した国々の結果を見ると、中国の都市や台湾などが上位を占めていることがわかる。その理由について、テレビ朝日元北京支局長の安江伸夫氏は中国における教育への熱心さがあると話す。

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 「(中国は)あと30年で世界一の強国になろうという目標を持っている。世界一になるためには軍事力も必要かもしれないが、それだけではなく科学技術や重工業などで『世界に通用する一流の製品を作るんだ』『一流の実績を上げていくんだ』と。中国はスローガンで動く国で、教育で国をたてるんだという目標があればそれに従う。教育ママにあたる言葉として、“虎ママ”という言葉があるくらい教育熱心。アメリカなどの教育メソッドを大胆に取り入れて作業している。衣食住の中で、最優先に教育に回すということをやっている」

 一方で、中国が上位を占めているように見えるのは“からくり”もあるという。

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 「今回、広東省の広州市なども参加しているようだが、成績が良くなかったらしく上位にはランクされていない。中国のネットサイトなどで調べてみると、上位にランクしていなかったところについて、中国政府は公開を許可しなかったという背景があるらしい。中国の結果の良かった都市だけが表に出てきた部分が強い。OECDの調査発表が公平に行われたかどうかは疑問がつくと思う」

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 とはいえ、日本の読解力が順位を落としたことに変わりはない。学校外でのデジタル機器利用状況(平日)の調査で、「コンピューターを使って宿題をする」「学校の勉強のためにインターネット上のサイトを見る」の項目で日本はOECD平均を著しく下回っている一方、「ネット上でチャットをする」「1人用ゲームで遊ぶ」の項目ではOECD平均を大きく上回っている。

 こうした結果について、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は読解力を「立体的なもの」だと分析。「例題を見ると、違った立場や異なる視点の中から共通項を見つけ出したりしないといけなくて、関係性を頭の中で並行に並べたり上に乗せたり、前に置いたりするような立体的な思考が必要。これがなぜ日本の学校で教えづらくなっているかというと、算数や理科のように直線的な答えがあるわけではなく、これまでの会話や読んできた本から関連付けるといった複合的な力になるから」との見方を示す。

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 また、読解力の低下に読書量の減少が影響しているとされることについて、「立体的な考え方を養うには、読書だけでなく人と議論することも大事だと思う。その議論というのは、違う考え方や立場について話し合って、衝突しながら新しい見解を導き出すというもので、仲の良い友達と“うんうん”と言い合うだけでは議論にならない。大人や先輩といった考え方が違う人と議論する教育の時間が減っているように思う」と指摘。そして、「インターネットも自分とは違う意見を見つけることができる場所だったはずなのに、むしろ必要なものを必要なだけ直線的に手に入れられる気楽な環境にかたよってしまった。自分が同調できるものばかりを選んでしまって、違う考え方に触れるのが面白いというムードはないかもしれない」と警鐘を鳴らした。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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