我慢すれば体調にもプラス?誰も教えてくれない自慰行為のウソ・ホント、正しい情報を伝えるための取り組みも
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 「今日でオナ禁13日目になりますね」。そう話すのは、自慰行為の禁止を課している加藤さん(仮名・24歳)だ。「高校1年生の春、やたら疲れが出ると思ったんです。ちょっと歩いただけで息切れしたり、頭の方もちょっと疲れやすくなってきまして。変わった生活習慣というのが、自慰行為だったんです。もしかしたら原因がこれではないかということで」。

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 誰にも相談できず、体の異変を自慰行為のせいではないか考えて始めた“オナ禁”。効果のほどは「まず疲れにくくなりました。だるさが全くなくて。何よりも感じているのは寝起きが良くなったことですかね。起きるのが楽しみになると言いますか」。

 男性の自慰行為の頻度は平均月に11.4回というデータもある。加藤さんも、20日ほどで我慢の限界が訪れ、時には夢精してしまうこともあるという。それでもリセットすると、再び禁欲生活が始まるのだ。“オナ禁”を可能な限り維持するため、環境づくりにも余念がない。

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 実家暮らしであることを活かし、自室のドアを常時解放、留守番の時にはカーテンを開け放つ。また、ティッシュも置かないようにし、トイレにも長居はしない。さらに妄想の元を断つべく、パソコンは家族がいるリビングで使用、ネットにはあえてLANケーブルで接続することで、自室に持ち込まないようにしている。携帯も、極力手の届かない距離に置いている。

 女性と付き合った経験はなく、性交渉も未経験の加藤さん。仮に彼女ができても、効果持続のため禁欲は続けると話した。

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 彼のように自慰行為を断とうとする人は世界中で増えているという。アメリカの掲示板サイトでは、「NoFap」と呼ばれる、禁欲を進めるコミュニティーが生まれ、55万人以上の人々が参加しているという。しかし、本当に効果はあるのだろうか。

 男性の性機能障害や不妊症に35年携わってきた川崎医科大学の永井敦教授は、「射精しすぎると頭が悪くなる、禿げやすくなる、ニキビができると」といった言説を「全くのデマだ」と退け、加藤さんの「目覚めが良くなる、やる気が出る」という主張についても、「本人が言われることは正しいかもしれないが、個人の感想だ」と話す。

 それどころか、永井教授は「医学的には問題があると思う」と指摘する。「ハーバード大学公衆衛生学教室による、アメリカ人男性を約20年間追跡した調査によれば、射精の回数が多ければ多いほど前立腺がんになりにくかったという結論が出ている。つまり、精液を溜めるということはあまり良いことではないと考えられる」。

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 また、男性不妊治療手術で日本有数の実績を持つパイオニアである獨協医科大学埼玉医療センターの岡田弘医師は、「妊活する上では禁欲に注意が必要だ」と話す。「最近わかってきたことだが、精子の運動性が下がってしまう。何よりもDNAそのものが損傷を受けた精子の割合が増えてしまうということが分かってきた。長期間の禁欲は良くない」。

■学校でも教えてくれない…正しい情報は?男性だけでなく、女性も悩み

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 禁欲は男性だけではない。女性の発信であったのだ。8カ月間の禁欲によって、心と体にどんな変化が起きたのかをYouTubeで紹介したオランダ人・クリステルさん(当時24歳)は「自慰行為をやめて2週間でやる気がどんどん出てきた。見た目も綺麗になったと思う。この体験を皆にも知って欲しいの」と呼びかけた。この動画は150万回視聴され、日本語訳された動画の視聴回数も20万回に達している。

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 女性向けアイテムの専門店を大手百貨店に出店するなど、誰もが性を楽しめる社会を目指すことを理念に掲げる株式会社TENGA。広報宣伝部の西野芙美氏は「自慰行為の抑制が体に良いかどうかは定かではないが、例えば自慰行為でオーガズムを得るとリラックス状態になりやすいと話として伺っている」と話す。理化学研究所の協力のもと行われた脳波をはかる実験では、同社の女性用アイテム使用した際には、「瞑想」時に近い状態であることがわかったという。

 また、先月には中高生向けのサイトを開設。専門家の見解やデータを交え、正しい知識を伝えようとしている。「“女の子は1週間にどれくらい自慰行為するか?”という質問であったり、“女の子が自慰行為するのは変か?”という質問には、“したくなるのも、したくないのも普通”と返す」(TENGA広報宣伝部の本井はる氏)

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 誰にも相談できない話だからこそネットの情報を鵜呑みにしてしまう。東京中央美容外科池袋院院長の井上真梨子医師も「“自慰行為をしないでいると痩せやすくなるような気がするが、どうなのだろうか?はたまた気のせいなのかとても気になる”という質問など(禁欲に関しての質問は)結構来る」と明かす。「自慰行為は恥ずかしいこととか悪いことという負のイメージがまとわりつき、人に相談しづらいことであるので、正解を得る機会がない」。

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 ファクトチェック・イニシアティブの楊井人文氏は「根拠を持って報じられているか、エビデンスがあるのかが重要だ。初めて聞いた話やネットにしか流れていない情報などは立ち止まり、簡単にシェアしないことが大切ではないか。また、100%正しいメディアはなく、大手メディアでも誤報をすることがある。根拠があるのかを確認する以外にない。ただ、特に科学的な分野は、科学的な証拠があるかないかも科学者によって判断が分かれる。証拠の信頼性。高いレベルの証拠なのかどうかが案外難しい」と話した。

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 セックスについての18歳意識調査(日本財団「18歳意識調査」調べ)によれば、「性に関する情報源は?(複数回答可)」は1位・Webサイト55.8%、2位・友人から50.2%、3位・SNS31.4%、4位・教師16.4%となっている。また、「学校での性教育は役に立っているか?」との質問については、「役に立った」59.1%、「役に立たなかった」40.9%という結果だった。さらに、TENGAによる「マスターベーション世界調査」(世界18カ国・1万3029人、2018年)によれば、日本人の自慰行為の初体験年齢は平均14.6歳で、調査対象国中、最も若いという。一方、“子供の頃、習ったことはある?”との質問に対して、「はい」と答えた人は12%と、世界で最下位だった。

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 現役の養護教諭で、性の話題について安心して話しができる環境づくりに取り組むコンドームソムリエAi氏は「平均で14.6歳ということは、もっと早い子もいるということ。知識のないまま、例えば自分の体重を床に押し付ける“床オナ”によって強い刺激に慣れてしまい、女性の膣内のグリップに対して乖離が生じ、膣内でいけなくなってしまうような障害につながってしまう可能性がある。あるいは清潔な手でしないと炎症を起こしてしまう恐れもある」と話す。

 しかし、小中学校の教科書で自慰行為についてはほぼ触れられていないようだ。「本当はそういったことを学校で教えた方がいいが、そもそも性行為自体が発達段階に即していないと見なされており、中学校の教科書で触れない。親に聞くものでもないし、学校でも教えてくれないとなると、SNSで調べて間違った情報を鵜呑みにしてしまったり、自分はおかしいのではないかと悩んだりしてしまう。もっとも、学校も教科書を超えた指導はできない。やはり先生個人の知識・経験や熱意、他の先生や地域の協力体制が掛け合わされてやっと、という感じだ」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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禁欲主義が拡大!精子の動きに影響も?
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