いつも落ち着き、穏やかな豊島将之竜王・名人(29)の表情が崩れた。プロ将棋界初の団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」で、自らパートナーに指名したのは佐々木勇気七段(25)と斎藤明日斗四段(21)。通称「Bad Boys」と呼ばれる若手コンビだが、この仲間の影響からか、普段は見えない最強棋士の素顔が次々と見えた。中でも「将棋めし」においては、ちょっとした天然ぶりだ。
▶映像:豊島・佐々木勇・斎藤明によるチーム「GOOD BOYS」
3人のつながりは、豊島竜王・名人が竜王位を獲得した指宿に、2人が駆けつけたところから。斎藤明四段は「優しくていつもニコニコしゃべっていただける」、佐々木勇七段が「将棋ですよね、やっぱり。勝ち方も将棋に対する姿勢も」と、豊島竜王・名人の印象を語ると、本人もにっこり。「佐々木君は天然なところがおもしろい。斎藤君は思ったよりか真面目というか、ちゃんとしている人」と、お返しに長所をあげた。
インタビューなどでも決して口数の多い方ではないが、同じ20代の仲良しがいたこともあってか、いつになく言葉が滑らかな豊島竜王・名人。ファンのお楽しみ要素でもある「将棋めし」については「対局当日は結構カレーとかが多いかな。タイトル戦で2日制だったら、1日目はご当地のものを食べて、2日目はカレーとか。カレーはそんなに好きじゃなかった気がするけれど、勝率が高い気がする」と、まさかの“験担ぎカレー”を紹介した。また、おやつにはフルーツ盛り合わせを注文することでも知られるが、これについては「なんか体に良さそうだから」とあっさり。将棋についての研究は盤石ながら、食事については、割とざっくりとしたタイプのようだ。
仲良し3人組のトークテーマは、プロ棋士の登竜門である奨励会時代について。かつてあった奨励会旅行で豊島竜王・名人は「自分は小学校3年で周りは大人。すごいところに来てしまった…」と、小学3年生にはハード過ぎる旅行になってしまったというエピソードを披露し、周囲の笑いを誘っていた。
静かな闘志を燃やして対局に向かう豊島竜王・名人が、一緒にいて楽しい仲間とともに戦う団体戦。チーム名「GOOD BOYS」が優勝を遂げるようなことになれば、その顔にはさらに見たことのないような笑顔の花が咲く。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)