持ち時間5分、1手指すごとに5秒が加算される将棋の超早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」の予選Aリーグ、チーム豊島VSチーム久保が4月11日に放送され、先鋒戦で今泉健司四段（46）が斎藤明日斗四段（21）に三番勝負を2勝1敗、＋1ポイントを獲得した。
最年長でプロ入りした苦労人が、緊張しっぱなしの晴れ舞台で仕事を果たした。リーダーの久保利明九段（44）、頼れる後輩・菅井竜也八段（27）に背中を押されて挑んだ第1局。事前の会議では後手番で四間飛車をやると決めていたが、選んだのは三間飛車。競り合いの中で、斎藤明四段のミスを見逃さず、138手でチームに初勝利をもたらした。
すんなり連勝となれば話は早いが、そう簡単にもいかなかった。先手番の2局目は、作戦どおりに三間飛車。自分よりも25歳も若い勢いにも押され、150手で投了。「ちょっと焦りましたね。実戦的に勝負する手段はあったような気がするんですけど、しょうがないですね」と振り返った。
大事な3局目。今度の後手番は、当初決めていた四間飛車を用いて、斎藤明四段の攻めを受け止めた。もつれる中で「ちょっと怪しいことをやった。正直ルール的に人間が嫌がることをした」と、苦労人ならではの戦いぶりで若手棋士を困惑させると、自分のペースに引きずり込んで、最後は即詰みに。94手で勝利すると対局後には心の底からホッとした表情を見せた。
プロの道を2度断たれた男だ。奨励会を一度は年齢制限で退会したものの、三段編入試験に合格し、プロ入りとなる四段昇段に再挑戦。2年間、計4期戦ったものの、再び規定により退会となった。それでも夢を諦めず、今度はプロ編入試験にトライ。五番勝負を3勝1敗で勝ち越し、41歳という史上最年長でプロ入りを果たした。
アマチュア時代から親交があった久保九段、菅井八段と一緒に戦えることが、何よりもうれしい。ドラフト会議を前に、久保九段には年賀状で「選んでください」と直訴。自ら手を挙げ、選んでもらった以上はとにかく結果が出したかった。「非公式戦だけど、これ（AbemaTVトーナメント）に対する思いは、全選手の中で一番強いのは僕なんじゃないかと正直思ってます」と熱く語るのは、プロ棋士として大きな舞台に出られたこと、そして選んでもらったことへの恩返しの思いからだ。
「チーム振り飛車」とも呼ばれる3人組で、最年長ながら先陣を切る役目は見事に果たした。「このチームは、僕が勝てば優勝だと思います。だって僕が敵わないと思った2人が、トントンとやられるわけないですから」。ド根性を見せた46歳・今泉四段が、プロ将棋界初の団体戦で、これからも大暴れする。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を－1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム＆リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム（羽生善治九段）
（ABEMA／将棋チャンネル）
▶映像：第3回AbemaTVトーナメント 豊島・佐々木勇・斎藤明 対 久保・菅井・今泉
▶映像：チーム久保（久保九段・菅井八段・今泉四段）の爆笑練習会
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