プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の大会に先立ち行われたドラフト会議の模様が3月27日に放送された。リーダー棋士が2人ずつを指名、14チームが結成され、注目の藤井聡太王位・棋聖(18)は1巡目に同い年の伊藤匠四段(18)を指名。また2巡目には、指名が重複し「初ドラフト・初くじ引き」を経験したが、惜しくも外れるといった一幕もあった。4月3日には15チーム目を決めるエントリートーナメントの模様を放送。全15チームによる予選は、10日からスタートする。
昨年、多くの将棋ファン・関係者の胸を踊らせた団体戦の“新キャスト”がついに決まった。ドラフト会議初参加となった藤井王位・棋聖は、事前のインタビューで「同年代の方を」と発言していたとおり、1巡目に伊藤四段の名を書いた。「あまりお話をしたことはなくて、今回をいい機会にしたいです」と、奨励会入り前の小学生時代に対戦経験こそあるが、その後はほぼ交流がないと明かしつつ、18歳コンビの結成を楽しみにしていた。
宣言通りだったのは、くじ引きもだ。「自信がない」と言う通り、2巡目で服部慎一郎四段(21)の指名が糸谷哲郎八段(32)とかぶると、抽選は惜しくも外れ。口に出したことで言霊になったと少し後悔したような様子も見せたが、過去のこの大会で対戦経験もある高見泰地七段(27)を指名。平均年齢21歳という最年少チームが完成した。
このほか、ドラフト会議の醍醐味である、くじ引きを堪能したのが木村一基九段(47)と斎藤慎太郎八段(27)だ。1巡目、2巡目ともに指名が重複し、抽選は2度とも木村九段の勝ち。斎藤八段は、前年の佐藤天彦九段(33)に続いて、2度連続で外すことになった。会議全体の傾向としては、会議に参加した人数が12人から14人に増えたものの、指名重複は3つだけ。「かぶることが増えそう」と予想していたリーダー棋士も多かったが、日本将棋連盟会長でもある佐藤康光九段(51)が言うように「棋士の考えていることはわからない」という結果になった。
指名された棋士の傾向には、前回から変化が出た。前年、森内俊之九段(50)、久保利明九段(45)が大活躍したこともあり、45歳以上のベテラン棋士の指名が増加。前回、12チームで5人だったところ、14チームで8人となった。12チーム36人の平均年齢が約33.2歳だったのに対し、14チーム42人で約35.1歳に。29人が2度目の出場で1つずつ歳を取ったことを考えても、経験豊富な棋士が積極的に選ばれたと言えそうだ。反面、デビュー間もない新四段の指名もあり、若さと勢いでどこまで旋風を巻き起こすかも、ポイントとなる。
若き才能が集まったチーム、レジェンドチームの再結成、さらに棋風や出身校といったテーマなど、様々な思惑によって生まれた14チーム。これにエントリートーナメントを勝ち抜いた3人による1チームを加えた全15チームが加わって、半年に渡る将棋界最大とも言えるエンターテイメントかつ真剣勝負の団体戦がついに幕を開ける。
◆ドラフト会議結果(左からリーダー、1巡目、2巡目。○は重複でくじ当たり、×は外れ)
渡辺明名人 近藤誠也七段 戸辺誠七段
藤井聡太王位・棋聖 伊藤匠四段 ×服部慎一郎四段 → 高見泰地七段
永瀬拓矢王座 増田康宏六段 屋敷伸之九段
佐藤康光九段 森内俊之九段 谷川浩司九段
三浦弘行九段 高野智史五段 本田奎五段
木村一基九段 ○佐々木勇気七段 ○池永天志四段
佐藤天彦九段 鈴木大介九段 古賀悠聖四段
広瀬章人八段 丸山忠久九段 北浜健介八段
糸谷哲郎八段 山崎隆之八段 ○服部慎一郎四段
稲葉陽八段 久保利明九段 船江恒平六段
菅井竜也八段 郷田真隆九段 深浦康市九段
斎藤慎太郎八段 ×佐々木勇気七段 → 村山慈明七段 ×池永天志四段 → 都成竜馬七段
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。