将棋の対局でファンが注目するコンテンツの一つが、休憩時間に棋士が食べる「将棋めし」。人気棋士が食べたものともなれば、たちまち人気メニューへと格上げになり、注文が殺到するということもある。藤井聡太王位・棋聖(18)も、その将棋めしが毎回話題になるが、本人いわく「見ていると2タイプに分かれている気がする」そうだ。分類したのは定跡派と力戦派。果たしてどういう意味か。
藤井王位・棋聖が将棋めしについて語ったのは、プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」のチーム企画でのこと。自らリーダーを務めるチーム藤井で、伊藤匠四段(18)、高見泰地七段(27)から、仲を深めるべく質問を受け続けていた最中だった。
こだわりの将棋めしについて聞かれたところ、これといったメニューを挙げるわけではなく「自分は結構力戦派」と、まるで棋風のような例えを出した。「力戦派なので毎回変えているんですよ。あまりこだわりがなくて。棋士の中には定跡派で、定跡を確立されている方もいると思うんです」と話し出すと、これには高見七段も「力戦派って初めて聞いた」と思わず、ツッコミが入った。
また藤井王位・棋聖の見立てでは「永瀬拓矢王座とか丸山忠久九段は定跡派、羽生善治九段は割と力戦派という印象があります」。つまりは毎回、同じメニューを頼んでいる・決めている人が定跡派、その日の気分や状況によって変えているのが力戦派、という意味合いだ。
何気ないような話だが、ここには藤井王位・棋聖が、他の棋士のことを都度チェックしていることが伺える。棋譜を確認できる「将棋連盟モバイル」では、棋譜・持ち時間の他に、将棋めしをはじめとする各種情報が掲載されている。ここも見ていない限り、定跡派も力戦派もわかるはずがない。実際、羽生九段は注文の幅が広く、他の棋士が頼んでいない“新手”にも積極的だ。
情報通ぶりは、他でも見られた。高見七段が叡王のタイトルを獲得した際、ドイツの旅行をしたことを口にすると、高見七段から「なんでそこまで知ってるんですか!藤井さんは忙しいイメージがあって、そんなに棋士のプライベートを知らないと思っていたんですけど…ちょっと冷や汗です」と驚きの声も出た。また、今回の団体戦でチームメイトに指名した伊藤四段がフィッシャールールを得意としているのも、そこまで広く知られたものでもない。
将棋は勉強するものではなく、生活の一部に取り込まれている、というような藤井王位・棋聖。どうやら深く研究している範囲は、盤上で行われているものだけでなく、その他の関連情報まで広く及んでいることは間違いない。