5月29日、来季のヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)出場を懸けたオランダ・リーグのプレーオフ決勝第2レグが行われ、菅原由勢が所属するAZがフィテッセに6-1と大勝。2試合合計7-3で、ECL出場権を獲得した。

 AZはキックオフから自慢の攻撃サッカーを存分に披露し、ファインゴールの連続でスタジアムは沸きに沸いた。フィテッセのサポーターが試合途中で観念し、相手チームを称える歌を歌い始めるほどで、AZはシーズンの土壇場で実力を出し切った。

 81分から右サイドバックとして出場した菅原は、「これだけ最後にいいサッカーするなら最初からやっとけという話ですよね」と笑顔だった。

「やってきたことの成果を運良く、こうやって最後に出せたのですごく良かったです。勝たなければいけないというプレッシャーの中で、チーム全員がやらないといけないことをやったことが、この大きな勝利につながったと思います」
 
 AZは若手とベテランが多いチームだ。中堅が少ないことを欠点として捉えず、上手くて賢い選手たちをベテランがサポートするようなチーム編成を意図して行なっている。
 
 フィテッセ戦では数少ない中堅のMFフリドレク・ミッチェが負傷で欠場したが、代わりに出場したタイヤニ・ラインデルスが2ゴールを挙げるなど好プレーの連発。やはり故障中の主将オーウェン・ヴァインダルの代わりに左SBを務めたミロシュ・ケルケズが生きの良いプレーから見事なアシストを決めるなど、若手の活躍が光ったゲームだった。
 
 23歳のラインデルスについて、菅原は「練習は裏切らない。彼の今までの練習を見ていれば、(フィテッセ戦の活躍は)当然のこと」、18歳のケルケズについては「ピッチ内でもピッチ外でも生きが良いんで。(今年1月にミランから)彼が来て(チームのムードが)完璧に良くなった」と語った。

「自分はもう最近はベテランみたいな感じで、“わあっ”てやるタイプじゃなくなった。もう僕もチームの中でそんな若くないんでね」
 
 菅原はレギュラー陣の中では最年少の21歳。しかし、毎年主力が入れ替わるチームにおいて、19-20シーズン加入の菅原は、在籍期間の長い選手の一人になった。2月には、「やっぱり自分がチームの中心にならないといけない。AZに来て2年半になります。チーム内では結構長い方になるので、自分がこのチームを変えて、いいチームにしていくんだという自覚を持ってやってます」と言っていた。

 中堅不在の好チームの中で、いつしか菅原もチームリーダー役の一人というタスクを帯びるようになっていた。

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 AZはベテランも凄い。30歳のMFヨルディ・クラシーは、出場機会こそなかったものの3月にオランダ代表復帰を果たし、来たる6月の国際マッチウイークでは、同じく30歳のDFマルチンス・インディが5年ぶりにオランダ代表のユニホームを着ることになった。
 
「僕のときも、ブルーノ(マルチンス・インディ)のときも、(代表復帰を)みんな自分のことのようにみんな喜びました。本当にいい流れでいいチームになったと思います」
 
 今シーズンを「課題をしっかり考えながらやりました。なんと言っても、試合をいっぱいこなせたことが、僕の成長につながりました。これが、今後にどんどんつながっていくと思います。すごく中身の濃いシーズンでした」と振り返る菅原は、休むまもなく日本代表に合流する。

 ただし、この1か月間、左ひざに違和感と痛みを抱えており、それがAZでの出場時間減少につながっているのは気がかりだ。

「森保(一)監督が僕に対して思っていた課題をどれだけ克服できているかを(代表で見せたい)。守備で言えば対人のところ、ポジショニングのところ。しっかり成長したところをまずはしっかり見せたい。そこから攻撃では『自分の色』があるので、クロスや攻撃参加を自分らしくやっていけたらなと思います」

取材・文●中田徹