日本は6月10日、キリンカップサッカー2022でガーナと対戦。前半に山根視来、三笘薫、後半に久保建英、前田大然がゴールを挙げ、4-1で快勝した。14日に行なわれる決勝は、チリを2-0で破ったチュニジアとの対戦となる。

 日本の90分間を通したスタッツは、ポゼッション率55パーセント、シュート17本(枠内6本)。ガーナが高い位置からプレスにこなかったので、センターバックがフリーで配球することができ、主導権を握る展開になった。

 ガーナの守備システムは[5-3-2]。日本は序盤、右ウイングの堂安律がスペースへの飛び出しからチャンスを作ったが、これは効果的な先制攻撃だった。日本の[4-3-3]とガーナのシステムのかみ合わせを見ると、相手アンカーの両脇で、インサイドハーフの久保建英と柴崎岳が浮く格好になる。

 この浮いた久保と柴崎をマークしようと前に出た、ガーナの左右センターバックの背後のスペースへ、大外から堂安が斜めに飛び出した。目の前の敵を1対1で振り切れば、左センターバックは久保に釣られているため、中央でカバーする選手はいない。堂安の飛び出しは効果的だった。
 
 他方、逆サイドでも三笘が同じように相手を振り切り、スペースへ飛び出そうと狙っていた。両チームの立ち位置のかみ合わせ上、堂安や三笘の飛び出しは、カバーが利きづらくなる相手の急所をうまく突いていた。

 しかし、時間とともにガーナは堂安らの飛び出しを警戒し、左右センターバックがとどまってスペースを埋めるようになり、最終ラインが低くなった。その分、中盤にはスペースが生じるため、前半の中頃からは久保や柴崎、あるいはサイドバックの山根や伊藤洋輝がボールを持ちやすくなり、堂安や三笘とともに両サイドを、ひと手間加えたコンビネーションで崩す展開になった。

 29分に生まれた先制点は、まさにその形だ。久保、堂安とのコンビネーションで山根が飛び出し、左足でゴール。本戦出場を決めたワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦でも見られた形で、見事な崩し方だった。
 
 一方、左サイドでは伊藤がそれほど高い位置へ出ていかず、山根よりは守備的な立ち位置を取った。三笘が仕掛けるスペースを潰さないように、あるいはインサイドハーフの久保と柴崎がともに攻撃的な組み合わせなので、バランスに注意したのかもしれない。

 ところが、三笘がいくつかドリブルの仕掛けを見せると、相手MFがダブルチーム気味に寄って、スペースを与えないよう警戒を強めた。これでは三笘は仕掛けづらいし、ボールも受けづらくなる。

 すると後半、それまで守備的だった伊藤の動きが変わった。三笘がパスを受けやすいよう、ハーフスペースからライン間へ出て、相手MFや右センターバックの注意を引きつける。三笘に集中するマークを分散させるべく、伊藤は効果的なポジションを取った。

 43分のパスミスによる失点は勿体なかったが、日本は攻撃において、状況を見ながら効果的な崩し方を編み出していた。この点は非常に良かった。
 
 少し乗り切れなかったのは、センターフォワードの上田綺世かもしれない。

 攻撃の起点となるプレーは見せたし、守備も効いていたが、ストライカーの彼が得意とする飛び出しは、ほぼ空振りに終わった。たとえば上田が、スルーパスやアーリークロスを欲しがって裏へ飛び出したとき、久保や堂安らは上田をポスト役に使おうと足もとにパスを入れ、それがミスになって相手に拾われる。こうしたFWとMFの意図が合わない場面は少し目についた。

 サッカーはゴールを競うスポーツなのだから、ストライカーである上田の動きに合わせて逆算するのが、本来の在り方ではある。しかし、日本代表はあまりそういうサッカーをしたことがない。基本的にストライカーではなく、中盤が主役になりがちだ。

 少なくともこの10年強のあいだ、日本代表における1トップは中盤のサポート役、あるいは守備役の印象が強く、FWなのに脇役のような存在だった。点取り屋としての存在感を見せた選手と言えば、大迫勇也くらい。もっとも、彼はもともとポストプレーヤータイプなので最初から代表との相性が良い。

 日本代表はそうした中盤主体のチームなので、仮に上田が、MFたちの足もとでつなぎたがるタイミングで、裏へのボールを欲するとすれば、それは相当要求しなければ出ないだろう。上田にとって難しい状況ではあるが、浅野拓磨のような長駆向けのタイミングではない、自分のタイミングをいかに味方へ伝えていくのかが、今後の鍵になりそうだ。

文●清水英斗(サッカーライター)

【キリンカップPHOTO】日本4ー1ガーナ|久保&前田がA代表初ゴール!4発快勝でチュニジアの待つ決勝の舞台へ