チッチの下でチームは完成の時を迎えている

8年前の7月8日。この日はブラジル代表がミネイロンの惨劇を味わった屈辱の日だ。

2014年に自国開催のワールドカップに臨んだブラジルはもちろん優勝を狙っていたが、準決勝でドイツ代表に1-7と衝撃のスコアで敗戦。3位決定戦でも悪い流れは止められず、オランダ代表に0-3で完敗。後味の悪い形で自国開催のワールドカップを終えてしまった。

ブラジルは2002年の日韓大会が最後の優勝となっていたが、この2014年大会は欧州勢との実力差をはっきりと見せつけられた瞬間でもあったのではないか。当時チームを指揮していたのは日韓大会優勝監督でもあるルイス・フェリペ・スコラーリだったが、12年前とは訳が違った。攻撃的なスター選手を並べた大味なフットボールは欧州勢に通用せず、準決勝では完璧に連動するドイツの攻撃を抑えきれなかった。

そこからブラジルはドゥンガ、現在のチッチとバトンを繋いできたが、現チームの最大の強みは守備だろう。ネイマールを中心に攻撃陣も豪華だが、派手な攻撃フットボールで相手をねじ伏せるような戦いではない。

中盤ではカゼミロ、ファビーニョとワールドクラスの守備的MFが揃い、センターバックもベテランのチアゴ・シウバ、マルキーニョス、若いエデル・ミリトンと隙が無い。攻撃陣もヴィニシウス・ジュニオール、ガブリエウ・ジェズス、ロベルト・フィルミーノなど、最近のブラジル人アタッカーは守備意識も極めて高い。ファンタジスタ系の選手は減ったかもしれないが、そのぶんチームとして計算しやすい選手が揃っている。

自慢の守備を軸に、カタール大会へ向けた南米予選は40ゴール5失点と圧倒的なフットボールで通過。カタール大会ではグループGに所属し、スイス、セルビア、カメルーンを相手にすることになっている。顔ぶれ的にグループ突破は堅いだろう。

グループGを首位で通過し、ドイツがグループEを首位で通過すれば、両国は準々決勝で顔を合わせる可能性がある。ブラジルとしてはどこかでドイツを撃破し、8年前のリベンジを果たしたいと考えているはず。その先に世界の頂点が見えれば言うことなしだ。

屈辱のミネイロンの惨劇から8年。着々と準備を進めてきたブラジルは20年ぶりのワールドカップ制覇に届くか。今の手堅く計算できるフットボールなら、十分に頂点は狙えるはずだ。