日本サッカー協会(JFA)は13日、EAFF E-1サッカー選手権決勝大会に臨むサッカー日本代表メンバーを発表した。

 26人のうち10人が初招集というフレッシュな構成となり、横浜F・マリノスに所属するMF水沼宏太も初めてA代表のユニフォームに袖を通すこととなった。32歳での日本代表初招集は異例で、今回のチームでも最年長選手となる。

「メンバーを見た時に『あ、一番上か!』と思ったんですけど、一番上でも初めて代表に入って、自分の中ではやっとスタートラインに立てたなというのが本当に強くて。みんなと代表活動を通して成長しあって、とにかくこの3戦で全勝できるようにみんなで戦っていくうえで、自分は自分らしく、年長者らしく、元気いっぱいにやっていきたいなというのが一番です」

 水沼にとって日本代表は「昔からずっと目指してきたところ」であり、「サッカー選手である以上、ずっと目指し続ける」場所だった。今回、初めて声がかかり「この歳になってもできるんだというのを見せることができた」と一定の達成感はある。

 今季はリーグ戦18試合に出場し、4得点6アシストと際立った結果を残している。これまではアシストの多さが目立ったが、今年に入ってからはゴールも劇的に増加し、6月は初めてJ1の月間MVPにも輝いた。

「代表」と名のつくチームに選ばれるのは、ロンドン五輪直前にU-23日本代表として出場した2012年5月のトゥーロン国際大会以来。その後、五輪本大会出場を逃してからはJリーグで数々のクラブを渡り歩いてJ1通算300試合出場も達成していながら、「代表」に縁のないキャリアを送ってきた。

「いつから日の丸を背負ってプレーしていないだろうと考えた時に、(最後に代表のユニフォームを着てから)10年くらい経っているんですね。日本代表を目指してずっとやってきたけど、なかなかそこにたどり着くことができなかったし、この10年でいろいろなチームに行って、いろいろな方と出会った。それがすごく自分にとって大きなことで、間違いなくそれがなかったら今の自分はいない。自分のサッカー人生に関わってくれた皆さんに感謝したい気持ちがまず先に出てきました」

 そう周囲への感謝を口にする水沼にとって、「マリノスの選手として(日本代表に)選ばれたというのは、昔では考えられなかった」特別なこと。そして、マリノスのレジェンドであり父でもある水沼貴史氏と同じ日本代表選手となり「やっと肩を並べることができた」と誇る。

 何度もマリノスの試合に足を運んで視察していた日本代表の森保一監督は、水沼の選出理由について「自分の武器があって、チームで存在感を示している。サイドで起点になってクロスで得点チャンスを演出するところ、ゴール前にも入っていけ、ハードワークもできること」を挙げた。

 今回のE-1選手権は、11月に開幕するカタールワールドカップに向けて国内組に与えられた最後のアピールチャンスとなる。水沼が主戦場とする右サイドはMF伊東純也やMF堂安律、MF久保建英など優秀な人材がひしめく激戦区だが、大逆転で代表定着を果たすことができるだろうか。

 マリノスでゴールとアシストを量産するクロスマスターは「自分には自分の武器があって、なかなかいないタイプだと自分でも思っている」と語り、「みんなが持っていない武器をどれだけ出せるかがすごくキーポイントになってくる。今まで代表に選ばれている選手とは違ったプレーをやっていけたらいいんじゃないか」と意気込んでいた。

「これは本当に通過点にすぎないですし、スタートラインなので、ここからもっともっと高みを目指して、とにかく成長できるようにギラギラしてやっていきたいなと思っています」

 32歳で日本代表の“オールドルーキー”となった水沼は、サムライブルーのユニフォームをまとって周りの選手たちとどんな化学反応を見せてくれるだろうか。「年長者らしく、元気いっぱいにやっていきたい」と、いつも通りの姿勢でチームを引っ張っていくための心と体の準備はできている。

(取材・文:舩木渉)