日本サッカー協会(JFA)は13日、EAFF E-1サッカー選手権決勝大会に臨むサッカー日本代表メンバーを発表した。

 26人のメンバーリストの中に「宮市亮」の名前があった。横浜F・マリノスに所属する29歳のウィンガーは、2012年10月以来、10年ぶりに日本代表復帰を果たした。

 中京大中京高校卒業と同時にイングランドの名門アーセナルに加入。将来が約束されたかに思われたが、その後のキャリアは苦難の連続だった。肩、足首、太もも、両ひざのじん帯断裂など度重なる大怪我に見舞われて長期離脱を繰り返し、目立った活躍を見せられなかった。

 満足にピッチに立てない状況が続く中で、宮市は「引退も考えた」と明かす。

「10年間、怪我をして、引退も考えて、その中で代表に選出される人たちのコメントを見たり、プレーを見たりしていて、代表に戻れるかよりも、そういうことを考えることもできなかったというか。毎日毎日リハビリで歩く練習をして、走る練習をして、段階を踏んでいって、代表を考えることからは本当に遠ざかっていました」

 2021年夏に日本復帰を決断して横浜F・マリノスに加入するも、最初の半年間はコンディションが整わず、ほとんど出番なくシーズン終了。今年3月下旬の取材の中でも日本代表復帰について「自分は代表のことを考えるよりもマリノスでのポジションを確立できていないので、まだまだやることがある。まずはマリノスで活躍することを意識してやっていきたいと思います」と、クラブでの競争を勝ち抜いた先のことまで考えられる状況ではなかった。

 だからこそ、このタイミングでの日本代表復帰に「正直、驚きの方が大きい」と宮市は語る。そして「10年前は代表には入っていましたけど、特に試合に出ていたわけでもなかったですし、復帰という感覚は自分の中ではない」とも。

 心境としては「初招集」に近いものがあるのだろう。宮市にとって、今回の日本代表招集はあくまで「スタートライン」。今年11月のカタールワールドカップ出場に向けて、最後方からアピールしていかなければならない立場だ。

「サッカー選手であれば誰もが目指すところだと思いますし、そこに行けるチャンスを今もらっている。本当に狭き門かもしれませんけど、自分のプレーを精一杯出したい。既存の日本代表選手、海外組が多いですけど、そういう選手たちに少しでもプレッシャーをかけられるようなプレーをしていきたいと思います」

 蘇った爆発的な加速力で、すでに日本代表の中で確かな地位を築く選手たちを追い抜くことができるだろうか。宮市の活躍は、同じように怪我に苦しんでいる選手たちを勇気づけるに違いない。

「今も怪我に苦しんでいる選手は本当に多いと思いますし、諦めない気持ちさえ最後に持っておけば、何か変わるというか、人生の中で転機が出てくると思うので、そういう姿を見せていけたらいいなと思います」

 絶望から不死鳥のごとく復活を遂げた29歳は、10年分の思いを抱えて走る。ピッチの上でその全てを解放した時、どんなパフォーマンスが見られるか。アーセン・ヴェンゲル氏も惚れ込んだ宮市のポテンシャルが花開く時は、まさに今だ。

「10年前、19歳で(日本代表に)選ばれた時は率直にまず嬉しい気持ちがあったんですけど、今回は選出されて、嬉しいよりも責任感の方がすごく芽生えてきて。それが少年だった自分と、10年経って30歳に近づいてきた自分との違いかなと思います。

この10年間でいろいろな経験をして、悔しいことの方が正直多かったんですけど、今こうしてマリノスのおかげで本当に幸せにプレーできていますし、いろいろな感情を持っていますけど、この(E-1選手権の)期間にその感情をぶつけたいと思っています」

(取材・文:舩木渉)