大迫問題の解決策はあるか?
9月15日に発表された日本代表のドイツ遠征メンバー。30名の顔ぶれを眺めていると、森保一監督がワールドカップに向けて、どこを強化ポイントと考えているのかが浮かび上がってくる。
ずばり、CF、左ウイング、左SBだ。
森保ジャパンで長らくCFを務めてきたのは、大迫勇也(ヴィッセル神戸)だった。前線でボールを収めることができ、周りの選手を生かすパスも出せる大迫は、攻撃面において替えの効かない存在だった。
しかし、6月の4連戦では「コンディションが万全でない」という理由で招集が見送られた。国内組で臨んだ8月のE-1選手権にも、大迫、酒井宏樹(浦和レッズ)、権田修一(清水エスパルス)といった主力組は参加しなかった。
森保監督は大迫不在時のオプションを探る。6月に行われた4連戦では1トップとして古橋亨梧、前田大然(セルティック)、浅野拓磨(ボーフム)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)が試されたが、どの選手もアピールできたとは言い難かった。
そもそも、大迫のように相手を背負った状態でボールをキープできるFWは今の日本代表にはいない。古橋、前田、浅野はスピードを活かしてDFラインの背後への飛び出しを得意としていて、182cmの長身を誇る上田もストライカー色が強い。
新たなCF候補となるのが湘南ベルマーレの町野修斗だ。8月のE-1選手権で3ゴールを挙げた新進気鋭の22歳は、柔らかい足元の技術とパスを引き出す動き、どちらも高いレベルにある。“ポスト大迫”として白羽の矢が立ってもおかしくはない。
左ウイングの大穴・相馬勇紀
E-1選手権でMVPと得点王に輝いた名古屋グランパスの相馬勇紀が招集された。相馬が最も得意とする左ウイングは、森保ジャパンの10番を背負う南野拓実(モナコ)、カタールW杯出場をかけたオーストラリア戦で2ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)と実力者がひしめく激戦区だ。
ただ、南野、三笘は今シーズンの所属クラブでの状況が芳しくない。リヴァプールからモナコへ移籍した南野は決定機を何度も外してしまい現地メディアから酷評されている。世界最高峰のプレミアに活躍の場を移した三笘も、同ポジションに強力なライバルがいるチームで出場時間が限られている。
相馬は東京五輪では三笘を抑えて左ウイングのレギュラーを勝ち取った。前線からの献身的なプレッシングや、精度の高いフリーキックなど、南野、三笘が持っていない武器があるのは強みになるだろう。
W杯で同組となったドイツ戦、スペイン戦は日本にとっては格上の相手で、守備に回る時間が長くなることが予想される。自分たちがボールを持つ時間が短くなれば、攻撃の選手に求められるものも変わってくる。ドイツ遠征のプレーによっては、左ウイングのファーストチョイスに浮上することもありえるだろう。
長友か、伊藤か、中山か
11人の中で、レギュラーとして出る選手が最も読めないのが左サイドバックだ。ドイツ遠征では36歳の大ベテラン・長友佑都(FC東京)、6月に代表デビューを果たした伊藤洋輝(シュツットガルト)、プレミア2部に活躍の場を移した中山雄太(ハダースフィールド)の3名が呼ばれた。
長友か、伊藤か、中山か――。
W杯を2カ月後に控えて最終ラインの一角が決まっていない状況を、森保監督が楽観視しているはずはない。アメリカ、エクアドルとの2試合は左サイドバックの椅子を巡る“テスト”となるだろう。
長友は3人の中では唯一の右利きだ。日本代表では左サイドバックが主戦場だったが、右に回ることもできる。ブラジル戦では右サイドバックで先発出場し、世界最高峰の左ウイングであるロドリゴ(レアル・マドリード)に仕事をさせなかった。
伊藤は6月に初招集されると、パラグアイ戦で先発デビューを飾った。左の深い位置からのロングフィードや、180cmを超えるサイズを生かしたディフェンスなど、長友とは異なる持ち味を見せた。
アジア最終予選での“勝利の方程式”となっていたのが先発・長友、リリーフ・中山だった。プレミア2部に移籍後はレギュラーを確保しており、強度の高い環境でプレーしていることは森保監督にとってもプラス材料だ。
ドイツ遠征の2試合を終えれば、26名の最終登録メンバーの発表があって、11月からは本番に向けた準備が始まる。絶対的なレギュラーがいないポジションで序列を上げて、カタールのピッチに立つのは、果たして――。
文・北健一郎
■欧州遠征招集メンバー
GK
川島永嗣(RCストラスブール/フランス)
権田修一(清水エスパルス)
シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/ベルギー)
谷 晃生(湘南ベルマーレ)
DF
長友佑都(FC東京)
吉田麻也(シャルケ/ドイツ)
酒井宏樹(浦和レッズ)
谷口彰悟(川崎フロンターレ)
山根視来(川崎フロンターレ)
中山雄太(ハダースフィールド・タウン/イングランド)
冨安健洋(アーセナル/イングランド)
伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)
瀬古歩夢(グラスホッパーCZ/スイス)
MF/FW
原口元気(ウニオン・ベルリン/ドイツ)
柴崎 岳(レガネス/スペイン)
遠藤 航(シュツットガルト/ドイツ)
伊東純也(スタッド・ランス/フランス)
南野拓実(ASモナコ/フランス)
古橋亨梧(セルティック/スコットランド)
守田英正(スポルティング/ポルトガル)
鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)
相馬勇紀(名古屋グランパス)
三笘 薫(ブライトン/イングランド)
前田大然(セルティック/スコットランド)
旗手怜央(セルティック/スコットランド)
堂安 律(フライブルク/ドイツ)
上田綺世(セルクル・ブルージュ/ベルギー)
田中 碧(デュッセルドルフ/ドイツ)
町野修斗(湘南ベルマーレ)
久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)
Photo:高橋学 Manabu Takahashi