元日本代表監督の西野朗氏が、10月7日に公開された元日本代表MFの鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルにゲスト出演。日本初のベスト8進出をかけて戦った2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)のベルギー戦を振り返った。
ラウンド16の相手は、優勝候補にも挙げられていた強豪ベルギーだった。
グループステージ3戦目のポーランド戦では、決勝トーナメント進出のために、0-1でも攻めずに試合を終わらせた。西野氏には、その戦い方に思うところがあったのだろう。鈴木氏からベルギー戦に向けたプランを問われると、「ああいう戦い方(ベルギー戦)を払拭する試合をしてほしい」「アクションを起こしてほしい」という思いだったと回想する。
ベルギー戦の前半は0-0。「仮に0-1になっても、全然慌てる必要はない」と考えていたなかで、48分に原口元気が先制弾を決めると、52分には乾貴士が追加点を挙げて2-0とする。
「1-0、2-0になる展開は、少なくとも想定していない。ベルギーに対して拮抗はしていたけど、やっぱりしたたかにやられるところはやられていたし」
鈴木氏に、リードした状況でのチームの雰囲気を聞かれると、西野氏は「自分の采配というか、メッセージが足りないと思った」「やっぱり統一した戦い方がなければいけない」と悔やむ。
ベルギーの攻撃の特徴を、グラウンダーの速いカウンターと分析していた西野氏は、選手に「流れを止めていけ」と伝えていたという。しかし相手は「突然、いきなり空中戦の勝負に」持ち込んできた。日本は対応しきれず69分と74分に失点し追いつかれてしまう。
世界の舞台における強豪国の底力をまざまざと見せつけられた。「あのベンチワークっていうか、通用していないものに対するオプションをしっかり持っていた」「ガラッと戦略・戦術を変えて対応してくる。ワールドカップの空気って違うな」と振り返る。
そして、2-2で迎えた後半アディショナルタイム。日本は左サイドでCKを得る。その時、西野氏は延長戦突入を確信し、相手のカウンターを想定していなかった。セオリーでは守備を固める場面にもかかわらず、ベルギーは攻撃のために前線に選手を残しているのを見て、得点のチャンスだとも思っていたという。
しかし、CKをGKにキャッチされると、カウンターを発動され、逆転弾を奪われた。西野氏は「本領発揮の高速カウンター。締めでは、自分たちの得意な形でケリをつける。手のひらに乗せられて戦いをしていた」と感じたという。
このカウンターは、後に“ロストフの14秒”とも称されたが「もっと速く感じた」と回想。自身初のW杯を「コンマ何秒、数センチの世界が本当にあるんだなと思って。一瞬でも判断が遅れると世界ではやられてしまう」と振り返った。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
【動画】「一瞬でも判断が遅れると世界ではやられてしまう」西野朗がロシアW杯ベルギー戦を振り返る