グレアム・ポッター新体制でさらなる進化が期待される
今回はチェルシーで背番号19を背負うイングランド代表MFメイソン・マウントのこれまでのキャリアや代表での活躍、プレースタイルについて紹介する。
チェルシー生え抜きのマウントは、2019-2020シーズンにトップチームに定着して以降、常に攻撃の中心、そしてチームの中心として活躍している。だが、今季はチームの絶不調もあってマウント自身もコンディションを落としており、公式戦8試合を経過した段階で0得点1アシストと物足りないスタッツに終っている。
9月上旬に成績不振やオーナー陣との関係悪化などさまざまな事情が考慮されてトーマス・トゥヘルが解任された。後任に招聘したグレアム・ポッター監督の下では、就任からまだ日が浅いが、これまで同様にマウントをチームの中心に据えて戦う可能性が高いだろう。ブライトンをビッグ6のクラブと台頭に渡り合えるチームに成長させた新指揮官の下でさらなる進化が期待される。
ダービー時代からの師弟関係にあったランパードの重宝される
6歳でチェルシーのユースに入団したマウントは、同年代のタミー・エイブラハムやフィカヨ・トモリらとともに順調にユースカテゴリーを駆け上がり、2015/16シーズンと2016/17シーズンには18歳以下の選手で戦うFAユースカップで連覇を達成した。マウントはその年代で主将を務めるなどチームの中心として優勝に貢献している。
2017年に開催されたU-19欧州選手権ではイングランドを優勝に導き、自身も大会MVPに選出された。そして同年の夏にオランダのフィテッセへローン移籍している。フィテッセではリーグ戦29試合で9得点9アシストと初のトップリーグの舞台で堂々たる活躍を披露し、クラブの年間最優秀選手にも選出された。
続く2018/19シーズンは、トモリとともにチェルシーOBのフランク・ランパードを新監督に招聘したダービー・カウンティ(イングランド2部)へとローン移籍した。ローンプレイヤーながらマウントが”いる”と”いない”ではチームの完成度が全く異なるほどの存在感で、ダービーの昇格プレーオフ決勝進出に大きく貢献した。
これまでのチェルシーであれば、ローン先で活躍してもなかなかトップチームに定着することができなかったが、不幸中の幸いにマウントがダービーで活躍した翌シーズンの2019/20シーズンにクラブは補強禁止処分を受けていた。そのためマウントやエイブラハム、トモリらアカデミー産の選手がトップチームの一員となり、補強禁止という危機的状況もあってクラブOBのランパードが新監督に就任した。
ダービー時代からの師弟関係にあったランパードはマウントを重宝し、プレミアリーグでは37試合で起用した。アカデミー出身の選手を起用した中でもUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位でフィニッシュとランパード政権1年目は大成功を収めている。
しかし、翌2020/21シーズンは守備が崩壊したこともあり、ランパードは21年1月に解任された。ランパードの秘蔵っ子的な存在だったマウントは、新監督に就任したトーマス・トゥヘルの初陣でベンチスタートとなるなど序列の低下が心配されたが、最終的には実力で新指揮官を認めさせ、不動のスタメンに定着。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝ではカイ・ハヴァーツの決勝ゴールをアシストするなど優勝に貢献し、クラブの年間最優秀選手にも選出された。
2021/22シーズンはプレミアリーグで他にモハメド・サラーとジャロッド・ボーウェンしか達成できなかった二桁ゴール二桁アシストを達成するなど、チェルシーのみならず、プレミアリーグを代表する選手へと成長を遂げ、2シーズン連続のクラブ年間最優秀選手に選出されている。
ランパードを彷彿とさせるミドルシュート
恩師でもあるランパードとも比較される選手で、中盤の選手に必要な全ての能力を高次元で兼ね備えている。特に右足の精度は抜群で、強烈なミドルシュートのほか、セットプレーから正確なクロスをゴール前に送ることも可能だ。
チームのために走り続けられる選手であり、豊富な運動量とスピードを生かしたプレッシングの質と量は抜群だ。また最近ではボールを引き出す動きに工夫が見られるなど、オフザボールの動きに成長がみられており、課題だったオープンプレーからのチャンスクリエイト能力も改善されている。
現時点でもかなり完成度の高いプレイヤーだが、マウントはそれでも毎年成長を遂げている
イングランド代表でも活躍に期待
マウントはダービーにローン移籍していた18年10月にイングランド代表に初招集され、翌年9月に晴れてA代表デビューを飾った。デビューして以降は怪我などのアクシデントを除き、ほぼ全試合に出場するなどガレス・サウスゲイト監督からの信頼を確固たるものにしている。
2021年夏に行われたユーロ(欧州選手権)が自身初の国際大会出場でチームは準決勝と結果を残したが、マウントは464分間の出場時間でわずか1アシストと攻撃的なプレイヤーとしては物足りないスタッツに終った。この悔しさをバネに2021-2022シーズンは選手として、二段階も三段階も成長を遂げており、11月に控える2022 FIFAワールドカップ カタール(カタールW杯)での活躍が期待されている。