公式戦339試合で131ゴールを奪うスコアラー

今回は、チェルシーで背番号17を背負うイングランド代表FWラヒーム・スターリングのこれまでのキャリアや代表での活躍、プレースタイルについて紹介する。

マンチェスター・シティで5シーズン連続で二桁ゴールを記録し、公式戦通算339試合で131ゴールを記録していたラヒーム・スターリングだが、出場機会の減少や2023年夏に契約満了を迎えることもあって、2022年夏にチェルシーへと活躍の場を移すことを決断した。

オーナー体制が変わっていたチェルシーは専任のスポーツディレクター(SD)を設けていなかった。そのため当時の指揮官トーマス・トゥヘルが移籍市場において影響力を持っており、デニス・ザカリア以外の選手の獲得には関与したとされている。

ところが成績不振とオーナー陣との対立もあって移籍市場閉幕直後に電撃解任された。後任に就任したグレアム・ポッターは3-4-2-1のシステムを軸に戦う監督で、前職のブライトン時代にはウイングのベルギー代表FWレアンドロ・トロサールを左ウイングバックで起用する戦術を採用していた。左ウイングバックとは言っても、常に高い位置をとって大外からクロスに飛び込むなどフィニッシャーとしての役割を与えられており、スターリングもウイングバックとまではいかないまでも、トロサールと似たような役割が求められるだろう。

プレミアリーグのビッグクラブを渡り歩く

かつてイングランドの植民地であったジャマイカで生まれたスターリングは、2歳のときに実父が銃殺されるなど治安の悪い環境で生まれ育った。5歳のときに母親に連れられてロンドンへと移住し、クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)のアカデミーでキャリアをスタートさせた。

QPRでの活躍が評価されて15歳でリヴァプールへと移籍すると、加入からおよそ2年後の2011-2012シーズンにプレミアリーグデビューを飾り、続く2012-2013シーズンには17歳の若さで名門のレギュラーに定着した。プレミアリーグで9ゴールを記録した2013-2014シーズンの活躍から2014年のゴールデンボーイ賞を受賞するなど、世代別でも屈指の評価を受けていた。

ピッチでの活躍は評価されていたが、2014-2015シーズンに契約延長オファーを2度蹴ったことからサポーターの反感を買い、シーズン終了後にマンチェスター・シティへと完全移籍している。

当時のスターリングは「上手いけどゴールは決められない」というレッテルを貼られていたが、ジョゼップ・グアルディオラが監督に就任すると、フィニッシュの部分まで緻密にデザインされたフットボールを展開したこともあって得点数が急上昇。2017-2018シーズンからは18ゴール、17ゴール、20ゴールと3シーズン連続で15ゴール以上を記録した。

シティでの晩年になると前線の選手層が厚くなったこともあってベンチを温めることも増えた。このことに対してスターリングは「僕のシティでのプレー時間は限られていると感じていた。これ以上時間を無駄にすることはできなかったんだ」と振り返っており、チェルシーへの移籍の経緯を明かしている。

オフ・ザ・ボールの動きが秀逸

マーカス・ラッシュフォードやカイル・ウォーカーら、他のジャマイカにルーツを持つ選手同様にスピードが最大の武器である。スターリングはただ足が速いだけでなく、オフザボールの動きに優れた選手で、相手ディフェンスラインの背後を取る動きやマークを外す動きにも長けている。これは長年グアルディオラが率いたチームでプレーしてきたお陰で伸びた能力だろう。

左ウイングのイメージが強いかもしれないが、3トップであればどのポジションでも持ち味が発揮できる選手である。チェルシーでは加入当初に純正ストライカーが不在だったこともあり、最前線に入って中盤にボールを引き出すゼロトップの役割を求められていた。

2017-2018シーズンからは5シーズン連続で二桁ゴールを記録しており、同様の期間でスターリングよりゴールを決めているイングランド人選手はトッテナムのハリー・ケインしかいない。それでも決定機を外すイメージが強いのは、オフザボールの動きが抜群なこともあって、1対1の場面を多く迎えているからだ。

カタールW杯で大会初得点なるか

リヴァプールでの活躍を受けてスターリングは2012年11月に17歳11ヶ月と6日という若さでイングランド代表デビューを飾っている。本稿執筆時点では代表通算79試合に出場しており、これは現役選手における最多のキャップ数である。

国際大会には2014年のブラジルワールドカップから続けて出場しているが、なかなかゴールネットを揺らすことができず、初ゴールを決めたのは2021年夏に開催されたユーロ(欧州選手権)のチェコ戦だった。それまではゴールを決められず批判の的にされることが多かったが、同大会では3得点1アシストの活躍を披露して決勝進出の立役者となった。

当然ながら2022 FIFAワールドカップ カタール(カタールW杯)の代表メンバーに選出されるのはほぼ確実で、今回こそ過去2大会でゴールを決められなかった雪辱を果たしたいところだろう。

(文・安洋一郎)

FIFA ワールドカップ カタール 2022 完全ガイド by ABEMA
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