2006年大会からW杯を知っている男

ワールドカップ・カタール大会でグループEに入っている日本代表は、同居しているドイツ代表とスペイン代表に注目しがちだ。グループを突破するためにどちらかのゲームで勝ち点3が欲しいのは確かで、日本の選手たちがドイツ&スペインの選手とどこまで戦えるのかが大きな注目ポイントになっている。

しかし、もう1つのコスタリカも不気味な存在だ。英『FourFourTwo』がコスタリカの強みに挙げたのが、指揮官ルイス・フェルナンド・スアレスの経験値だ。

コロンビア出身のスアレスは、実はこれが3度目のワールドカップになる。最初のワールドカップは、エクアドル代表を指揮して戦った2006年のドイツ大会だ。当時のエクアドルはカルロス・テノリオや、まだ若かったアントニオ・バレンシアらを活かした堅守速攻のフットボールでコスタリカ(3-0)、ポーランド(2-0)を華麗に撃破。開催国ドイツとの戦いは敗れたが、スアレスはチームをベスト16へ導いている。

そのベスト16でもイングランド代表と接戦を演じており、許したゴールはデイビッド・ベッカムのフリーキックのみだった。惜しくも0-1で敗れはしたが、当時のエクアドルはなかなかに完成度の高いチームだった。

それから8年後、2度目のワールドカップはホンジュラス代表を率いての2014年・ブラジル大会だ。ホンジュラスは2010年の南アフリカ大会も経験していたが、決して強豪というわけではない。それでもスアレスは北中米カリブ海最終予選でホンジュラスを3位へ導き、メキシコよりも高い順位でワールドカップ出場権を手にした。

本大会は3連敗と残念な内容には終わったが、ホンジュラスにとってはワールドカップに出場しただけでも大きな功績だったと言えよう。

そして今回スアレスが指揮するのはコスタリカだ。指揮官として2度もワールドカップを経験しているのは1つの強みで、この経験値はドイツのハンジ・フリック、スペインのルイス・エンリケ、日本代表の森保一監督も持っていないものだ。

フリックは2006年よりドイツ代表のアシスタントコーチを務めていたが、指揮官はあくまでヨアヒム・レーヴだった。やはりアシスタントコーチと勝手が違うところはあるだろう。フリックはバイエルン、エンリケはバルセロナで3冠を達成するなどクラブシーンでは好成績を収めているが、代表での経験値はそれほど豊富ではない。

コスタリカはメンバーもベテランが多く、奇跡のベスト8と言われた2014年大会を経験している選手が多いのも特長的だ。指揮官を含め経験値は出場国の中でもトップクラスと言うことができ、コスタリカも簡単な相手とはならないだろう。

当然スアレスもドイツ&スペイン相手には分が悪いと分かっているはずで、グループ突破へ日本戦で勝ち点3を奪うべく調整してくるはずだ。それは日本も同じ考えだが、スアレスは日本戦へどんな仕掛けをしてくるのか。指揮官の攻防も見逃せないポイントの1つだ。