11月1日に発表されたカタール・ワールドカップを戦う日本代表メンバー26名に、前線では唯一の国内組として名古屋グランパスの相馬勇紀が選ばれた。

「Jリーグ代表とくくるのはあまり好きではないんですけど」と語る相馬だが、「前線にJリーグの選手が1人ということでは、Jリーグもやれるってことは示していきたい」と意気込みは強く、「1ゴール・1アシスト。結果を持って帰りたいです」と、彼らしい“結果”という言葉を使って本大会での目標を掲げている。

 昨年は東京オリンピックで全試合に出場するも、その後のA代表招集回数は少なく、9月の欧州遠征の際には「追い抜くだけ」と淡々としたものだった。だが、その実、「絶対に負けないんだという部分を一つひとつのプレーや練習のセッションから考えていた」と内なる闘志は燃やしていた。

「経験は少ない選手たちの、野心に期待している」と話した森保一監督の言葉にも、「まずは自分の立ち位置としてチーム内の序列は低いほう。そこでどれだけ上を“食って”いけるか。1人ひとりの危機感から、日本というチームが成長すると思う」と反応し、夢の舞台への気持ちを見せた。
 
 グループステージで対戦する3チームの中では、東京オリンピックでも対戦したスペイン代表に、より対抗意識は強いようだが、「リベンジの気持ちはない。また新たなスペイン代表をどう倒すかを考えている」と気負いもない。

 海外とJリーグの違いを相手の守備の対応にあると考える相馬は、それをむしろ得手とする選手であり、「“0-100”で守ってくる、ボールを奪うというサッカーの本質の部分が海外の選手にはある。そういった部分で上回ることができれば、チャンスはある」と自信を見せた。

 どちらかと言えば「当落線上」だった周囲の評価も「いろいろな予想が流れてくるなかで、みなさんしっかり選んでもらってなかったと思うんですけど(笑)」と笑い飛ばし、カタールへと気持ちを切り替える。

「夢に見ていた大会というよりは、今は間近に迫ってきた、自分が戦う大会という位置づけ。まずはチームのために、自分のために」

 日本屈指の突破力を持つ男は、死のグループを”突破“するサムライブルーの飛び道具となる。

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)

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