11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はグループEだ。

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■ドイツ
(18大会連続20回目の出場)

 連覇がかかった前回大会はメキシコ、韓国に敗れて、ドイツのW杯史上でも稀に見る惨敗を喫した。

 さらにベスト16で敗退した欧州選手権を最後に、長期に渡ったヨアヒム・レーブ体制が終了。バイエルンを2019-20シーズンの欧州制覇に導いたハンス=ディーター・フリック監督のもと、若いチームは成長を続けている。

 欧州予選後はネーションズリーグも含めて、2勝5分1敗と理想的な結果は出ていない。しかし、アタッカー陣など様々な組み合わせをテストしており、王座奪還を目ざす本大会に向けて、準備は進んでいる。

 懸念材料はティモ・ヴェルナー(チェルシー)が怪我で選外となったこと。その分、セカンドトップが本職のカイ・ハベルツ(チェルシー)が4-2-3-1の1トップを担うことになりそうだ。

 もう1人、大会参加が危ぶまれたレロイ・ザネ(バイエルン)も一時怪我による離脱で不安視されたが、11月になってクラブの試合にも復帰しており、左サイドで開幕スタメンの目途が立った。
 
■スペイン
(12大会連続16回目の出場)

 3大会ぶり2度目の優勝を目ざすスペイン。ポゼッションを重視した伝統的な4-3-3をベースとしながら、ルイス・エンリケ監督は積極的な選手起用でチームの競争力を高めてきた。

 昨夏の欧州選手権は優勝したイタリアに準決勝でPK戦の末に敗れたが、フェラン・トーレスやペドリ(ともにバルセロナ)といった若手が貴重な経験を詰んだ。

 そこから1年間で、さらに世代交代を進めて、ネーションズリーグやW杯予選を戦いながら、カルロス・ソレール(パリ・サンジェルマン)や18歳のガビ(バルセロナ)、ウーゴ・ギジャモン(バレンシア)などが台頭した。

 列強国の中でも若いメンバーの多いチーム構成となっている。彼らを中盤の底からまとめるのがセルヒオ・ブスケッツ(バルセロナ)で、まさしく「ラ・ロハの心臓」だ。

 不安材料はアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)の足首の負傷だ。10月29日に受傷しており、大会には間に合うと伝えられるが、貴重な大型FWだけに、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリー)を“ゼロトップ”気味にした布陣がメインになる可能性も。
 
■コスタリカ
(3大会連続6回目の出場)

 大陸間プレーオフでニュージーランドを下して3大会連続のW杯出場を決めた。

 前回はブラジルと同組でグループステージ敗退となったが、守護神ケイラー・ナバス(パリ・サンジェルマン)を筆頭に、2014年のブラジル大会でベスト8に輝いたメンバーが主力として残る。

 そこに18歳の“神童”ジェウィソン・ベネット(サンダーランド)などヤングパワーが加わった。前線で攻撃を引っ張るのは、2014年メンバーのホエル・キャンベル(レオン)だが、鋭いフィニッシュを武器とする22歳のアントニー・コントレラス(エレディアーノ)は欧州の二強や日本にとっても要注意だ。

 ブラジルW杯ではイングランド、イタリア、ウルグアイが揃うグループで首位突破しているが、やはり鍵は初戦だろう。4-4-2をベースにするが、5バックはいつでも使える。9日には国内でナイジェリアと壮行試合を行ない、2-0で勝利。直前のイラク戦で最終調整して、初戦のスペイン戦に挑む。
 
■日本
(7大会連続7回目の出場)

 かつてない厳しいグループに入ったが、ベスト8以上という森保一監督の強気な姿勢は変わらない。

 9月のアメリカ戦とエクアドル戦では4ー2ー3ー1を使いながら、対戦相手をより意識した戦い方で、課題を含めて良い感触を掴んだが、怪我人の多発が指揮官を悩ませている。

 9月の代表戦を前に膝を負傷した板倉滉(ボルシアMG)と浅野拓磨(ボーフム)に加えて、守備の要として期待される冨安健洋(アーセナル)も右太ももの痛みが再発したと伝えられる。

 そして最大の打撃が中山雄太(ハダーズフィールド)のアキレス腱負傷。26人のメンバー発表が行なわれて1週間後に事態が発表され、町野修斗(湘南)が追加招集された。

 攻撃のオプションは増えたが、左サイドバックをメインとする中山のビルドアップ能力とバランス感覚は代えが利きにくい。そしてディフェンスラインの選手層も不安要素に。

 板倉や冨安が怪我のリスクを抱え、吉田麻也(シャルケ)や谷口彰悟(川崎)、酒井宏樹(浦和)も年齢が高めだ。また中山が抜けたことで、センターバックを兼任する伊藤洋輝(シュツットガルト)も左サイドバックをメインにせざるを得ない。

 さらに、ここに来て攻守の要である遠藤航(シュツットガルト)がブンデスリーガの試合で脳震とうを起こしてしまった。暗雲が漂うチームだが、開幕前の17日にUAEで行なわれるカナダ戦で勢いを付けることができるか。
 
【グループE展望】

 ドイツとスペインの“二強”と見て間違いない。ただし、日本とコスタリカにもつけ入る隙は十分にある。

 やはり大事なのは初戦だ。日本はドイツ、コスタリカはスペインと対戦するが、欧州主要リーグが中断して1週間あまりで開幕するイレギュラーな日程で、決勝から逆算すると強豪国が100%で入ることはまずないが、今回はなおさらだ。

 2014年のブラジルW杯でコスタリカはいきなりウルグアイに3-1で勝利して波に乗った。日本も前回は強豪コロンビアから電光石火のPK奪取と相手の退場で、優位に立って勝利した。
 
 日本はドイツの強度に対して後手に回らず、引かずに戦うなかで勝機を見出せるか。一方のコスタリカは堅守速攻が強みであるだけに、スペインにボールを持たれても、粘り強く守ってカウンターにつなげるシーンは何度か作れるはず。そこでキャンベルをはじめとしたアタッカー陣が仕留め切れるか。

 もちろんドイツは日本、スペインはコスタリカの危険性を分かって、集中力を持って試合に入るはず。仮に両国が順当に勝利しても、2試合目で直接対決があり、ここは大きなポイントになる。

 その裏側で日本とコスタリカが対戦するので、勝ったほうは3試合目に希望をつなぐことができるはずだ。

文●河治良幸

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