いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はGK川島永嗣(ストラスブール)だ。
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これまで過去3度のワールドカップで、日本代表の守護神としてゴールマウスを守ってきた。
開幕前の危機的な状況からベスト16に躍進した2010年南アフリカ大会、本大会は惨敗に終わってしまった2014年ブラジル大会、衝撃的な“ハリル解任”から西野朗監督のもと、3度目のグループステージ突破を果たしながら、ラウンド16でベルギー相手に“ロストフの14秒”で沈んだ2018年ロシア大会。
それぞれの大会で、決してポジションが約束されていた訳ではない。2010年は名古屋時代の高き壁でもあった楢崎正剛に代表でも挑み、本番直前になって正GKを任された。
2014年は西川周作などとハイレベルな競争を繰り広げた結果のポジション死守だった。そして2018年、一度は所属クラブが無くなり、移籍先での出番もほぼ無い状態で、2017年3月のUAE戦(2-0)で、救世主的なパフォーマンスで鮮やかな勝利を支え、監督交代後もゴールマウスを譲らなかった。
浦和東高から大宮に加入すると、すぐにイタリアのパルマ留学で、ジャンルイジ・ブッフォンなどを指導したフルゴーニ氏に教えを受けた。大宮3年目にポジションを奪取すると、さらなる厳しい環境を求めて、日本で最高峰のGKと認められた楢崎のいる名古屋に移籍。
国内では最も厳しい環境に身を置きながら、一時は楢崎に代わって公式戦に出るなど、心身ともに大きく成長した。
そして川崎で3年半、絶対的な守護神としての地位を確立し、2010年の南アフリカ大会につなげた。
常に厳しい環境に身を置いてチャレンジするスピリットは、ベルギーのリールセからスタートした欧州リーグの挑戦で、さらに増していった。そこには自分の成長だけでなく、日本人GKの道を切り開いていくという思いが滲み出ている。
20代の前半から「40歳になった時にどういうGKになっているか」という言葉を発していたことを思い出す。4度目のW杯は39歳で迎えるが、挑戦者としてのスピリットは消えていない。
現代サッカーはGKにも攻撃面の貢献が求められるなかで、川島自身も着実にアップデートしている。しかし、彼がもっと大事にしているのが、しっかりと後ろを守ってあげることで、前の選手が安心して攻撃に行けること。
そのなかでピンチを1つ耐えることで、相手の勢いを止め、同時にチームを活性化させる。ゴールマウスを守るだけでなく、90分のゲームコントロールを支えられるGKだ。
「ワールドカップというものが自分を常に奮い立たせてくれていました。もう1回、目標を持たせてくれたことにも感謝したい。日本が世界を相手に勝っていくことが、自分自身の中でも目標なので、こういう形でワールドカップを戦うなかで、結果をチームの一員として残せていければいい」
いかなる立場になっても勝利に貢献する気持ちは変わらない。それは4年に一度のW杯だけでなく、常に川島が意識してきたことだ。そして、いつでもピッチに立つ準備はできている。
文●河治良幸
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