森保ジャパンの集大成となるカタール。ワールドカップ(W杯)。その命運を大きく左右する初戦・ドイツ戦がいよいよ迫ってきた。決戦は大会4日目の11月23日に行なわれる。
日本代表は19日から4日連続非公開で戦術の落とし込みを行なっているが、20日の練習はグラウンド横のメディアテントまで選手たちの大声が聞こえてきて、かつてない熱気を漂わせた。
それだけチームのテンションは最高潮に達しているということ。3度目のW杯出場となる酒井宏樹(浦和)も「やるべきことを全て準備しないと良い試合ができない相手ということ」と目をギラつかせていた。
そんななか、不安要素があるとすれば、ボランチだろう。9月の欧州遠征で遠藤航(シュツットガルト)と組んで絶妙の動きを見せた守田英正(スポルティング・リスボン)の怪我だ。
左ふくらはぎの違和感を訴え、合流初日だった15日から別メニューが続いているのだ。UAEのドバイで開催された17日のカナダ戦にはもちろん帯同せず、回復に努めていたが、20日になっても最初のランニングにさえ参加できていない。ドイツ戦出場は絶望的と言うしかない。
ご存じの通り、相手はヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカらバイエルンを軸とした中盤を擁し、高度に連動した攻撃を組み立ててくる。
鎌田大地(フランクフルト)は「彼ら中盤を自由にさせないことが大事」と強調する。2018年のロシアW杯16強戦士の柴崎岳(レガネス)も「ドイツは特に中盤のバトルに強みを持ったチーム。彼らのトランジションを抜けきれるかどうかが1つ、カギになってくると思う」と指摘していた。それを遂行できるベストな組み合わせを目下、森保一監督も必死に探っているところだろう。
布陣は4-2-3-1として、脳震盪から回復途上の遠藤航(シュツットガルト)が出場OKという前提で考えた場合、通常だと田中碧(デュッセルドルフ)とのボランチコンビということになる。
遠藤はシュツットガルトでバイエルンと何度も対峙しているし、ブンデスリーガ1部の“デュエル王”の実績を引っ提げて堂々と渡り合える自信があるはず。そこは問題ない。しかし、田中のほうはブンデス2部を主戦場としているため、バイエルンレベルの強度や迫力を公式戦で体感していない。その経験不足は確かにある。
W杯初戦という想像をはるかに超える重圧と緊張感のある試合で、立ち上がりから相手を受けてしまうような格好になれば、日本は狙い通りのハイプレス主体の守備ができなくなる。
最終予選の天王山、ホームでのオーストラリア戦で値千金の先制弾を叩き出すなど、大舞台に強い田中なら、そんな轍を踏むことはないはずだが、ほんの少し懸念材料があるのもまた事実だ。
田中以外の選択肢があるとすれば、筆頭は柴崎。4年前にベルギーとタフなゲームを演じた経験値があるのは心強い。ただ、カナダ戦を見ても分かる通り、彼は長短のパスやゲームメイクといった攻撃面では圧倒的な存在感を発揮するものの、ボール奪取力や球際・寄せの強さなどデュエルの部分ではやはり物足りなさも残る。
ドイツ戦で頭から守備のタスクを背負わせるより、後半から攻撃に比重を置いた役割を果たしてもらうほうがベター。指揮官もそう考えているのではないか。
となれば、もう1つのアイデアは、CBのレギュラー候補である板倉滉(ボルシアMG)の抜擢だ。これは冨安健洋(アーセナル)が完璧に間に合って初めて成立するプラン。現状では五分五分と見るしかない。
ただ、8月のバイエルン戦にフル出場し、実際にキミッヒの一挙手一投足を目の当たりにした板倉なら堂々と対峙できるはず。
森保監督もカナダ戦前にボランチ候補として板倉の名前を挙げており、緊急登板も視野に入れている様子だった。結局、その試合ではトライしなかったが、本番に向けての秘策として取っておいたのかもしれない。「ふたを開けてみたら板倉」ということもないとは言えないのだ。
彼ら3人の候補者の中からどの最適解を見出すのか。それは指揮官の決断次第。遠藤の状態も判断材料の1つになりそうだ。
脳震盪を起こした11月8日のヘルタ・ベルリン戦から約2週間、ゲームから遠ざかっているという部分も含め、慎重な対応が必要なのは確か。遠藤をサポートしつつ。守備強度をマックスまで引き上げたいということであれば、板倉を配置するのが最良の選択のようにも映る。
もっとも、負傷明けの冨安を強行出場させて、後に控えるコスタリカ戦、スペイン戦で起用できなくなるような事態も困る。本当に難しい選択なのは間違いない。
いずれにせよ、誰が出たとしても、ドイツの中盤を止められなければ、日本に勝ち目はない。特にキミッヒを大暴れさせてしまったら、勝点1を奪うことさえ厳しくなる。そこは徹底マークで応戦するしかない。
遠藤の本当の状態はどうなのか。森保監督が誰に重責を託すのか……。全ては23日に明らかになる。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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