結論から述べれば、安易にポゼッションに移行すべきではない。過去を振り返ると、2010年のワールドカップ、守備的なサッカーでベスト16進出を果たした日本はそこから「自分たちのサッカー」を理想に掲げ、攻撃的なスタンスで挑んだ結果、4年後のワールドカップでグループリーグ敗退を喫した。それを繰り返すのかと思うと、ポゼッションへの移行はどうしてもネガティブに映る。

 おそらくカウンターサッカーとポゼッションサッカーは別物だろう。少なくとも、カタール・ワールドカップで守備の部分はできていたから、では、攻撃の比重を高めるためにポゼッションにこだわろうという発想はナンセンスだ。

 今回、ディフェンスが上手くハマったのは前線からのチェイシング、追い込みもあったからで、最終ラインだけが頑張った結果ではない。チーム全体が連動したからこその堅守であり、そこからポゼッションに移行するなら一旦リセットして新たな組織を構築しなければならない。

 要するに、サッカーにおいて攻撃と守備は分けられないのだ。攻守一体でチーム作りを考えるのが基本で、だからこそカウンターサッカーとポゼッションサッカーは別物と勝手に思っている。

 仮に、カタール・ワールドカップを戦った日本代表が攻撃主体のサッカーで強豪国を打ち破るなら、以下のような選手が必要になるだろう。「三笘もしくは伊東の攻撃力と、冨安の守備力を併せ持ったスーパーなウイングバックもしくはサイドバック」、「前田の運動量と走力と、堂安の決定力を兼備したスーパーなアタッカー」。前者はモロッコ代表のハキミ、後者はフランス代表のエムバペのようなイメージだが、そんなプレーヤーはそう簡単に生まれないし、あまり現実的な話ではないだろう。

 なら、4年後のワールドカップに向けて日本はどう進化すべきか。その過程で重視したいのは、現在の守備組織を崩すべできはないということだ。冨安、板倉、遠藤、守田あたりは世界の舞台でも十分に通用したし、堅守はむしろ日本のストロングポイントにすべきである。そこを維持したうえで、どう攻撃を組み立てるかを考えるべきであり、極端なスタイル変更は陳腐に思える。

 そもそも、森保監督は就任当初から「できるだけ仕掛けられる選手を揃える」というコンセプトでチームを作ってきた。しかし、強豪国と戦うワールドカップではどうしても守備の時間が増え、耐え忍ぶ戦いを強いられるのが現実だ。

 カタール・ワールドカップでの日本代表はドイツやスペイン、クロアチアを相手に好き好んで守備から入るサッカーをやったわけではないだろう。できればボールを握って支配したかったはずで、実際、クロアチア戦後に「攻撃的に行きたい」と主張する選手もいたそうだ。
 

 日本が本気でワールドカップ優勝を目指すなら、今大会のブラジルやフランスなどからヒントを得るべきだ。簡単に言うと、彼らと日本の大きな違いは攻守の切り替えの速さと、最終局面での個のクオリティ。フランス対ポーランド戦のエムバペのゴール、ブラジル対韓国戦の2−0とした得点から分かるような、相手の予測を上回る攻撃を難なく繰り出せるようにならないと、ベスト8以上には到達できないのではないか。

 行き着くところはやはり、個の質を高める。ドイツやスペインのような相手にも独力でキープできる、シュートまで持ち込める、エリア内で囲まれても正確なシュートを打てる。そういう選手が増えてくれば、必然的にスタイルは変わってくる。

 「スタイルを変える」のではなく、個々のクオリティを高めて必然的に「スタイルが変わる」。こういうアプローチがひとつの方法論ではないだろうか。個を高めるには例えば、久保のように“欧州育ち”の選手を増やす手もあるだろう。いずれにしても、日本サッカー協会、次の代表監督(森保監督が続投も)らがどういう指針でチームを強化するのか、興味深い。

構成●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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