【専門家の目|金田喜稔】日本サッカー史を紐解き「ドイツ戦の勝利は本当に感慨深い」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月23日にカタール・ドーハのカリファ・スタジアムでカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第1節でドイツ代表(同11位)と対戦。W杯優勝経験国に対して2-1の逆転劇を演じて大金星を挙げた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、日本サッカーの歴史を紐解きつつ、「師匠であるドイツを、弟子の日本が超えた」と評価。かつて「ドーハの悲劇」を味わった森保監督が「ドーハの奇跡」を起こしたドラマチックな展開に心を震わせている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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かつてドイツ人のデットマール・クラマーさんが日本で指導してくれて、育成からサッカーリーグ創設まで、何から何まで尽力してくれた。
「日本サッカーの父」と呼ばれるのも納得で、クラマーさんの指導は日本サッカーの財産。1968年メキシコ五輪で日本が銅メダル獲得の快挙を成し遂げたのも、クラマーさんの指導を受けた選手・コーチたちがいなければ不可能だった。ドイツ人のクラマーさんにより日本サッカーの土台が出来上がり、今の日本サッカー界や日本代表チームがある。
当時、ドイツ代表やドイツリーグ、ドイツのサッカー・スポーツ環境などを日本は目指していた。そんな相手に勝つなんて考えたこともない時代からすると隔世の感がある。特に自分たちの世代からすれば、ドイツ戦の勝利は本当に感慨深いものがある。
言ってみれば、師匠であるドイツを、弟子の日本が超えた一戦とも言えるわけだから。
そして、驚いているのか不思議な縁だ。現役時代に「ドーハの悲劇」(1993年)を味わった森保監督が、今度は監督として「ドーハの奇跡」に変えてみせた。
29年の時を経て、ドーハの悲劇がドーハの奇跡に変わったわけだ。すごいドラマをサッカーの神様が作ってくれるものだと感じた。(FOOTBALL ZONE編集部)