サッカー日本代表が11月23日、開催中の「FIFA ワールドカップ カタール 2022」グループEでドイツ代表と対戦し、2-1で逆転勝利を収めた。優勝候補と目されていたドイツ代表を破る大金星で、東京・JR渋谷駅周辺には試合終了と同時にユニホーム姿のサポーターが集結して歓喜する姿も見られた。一部では「にわかファン」と揶揄される現象について、23日に放送の『ABEMA Prime』で元日本代表・駒野友一氏、元北朝鮮代表の鄭大世氏らが討論を交わした。

【映像】駒野×鄭大世と語る!にわかファンってアリ?

 歴史的な“ジャイアントキリング”を演じた日本代表。サッカーの国際試合では多くのサポーターがJR渋谷駅周辺に集結する様子がメディアで取り上げられるが、一部からは「にわかファン」と揶揄する声も。

ドイツ戦勝利に列島歓喜!にわかファンはダメ?鄭大世×駒野友一「サポーターの一体感は選手にも好影響」

 北朝鮮代表としてワールドカップに出場した経験を持つ、FC町田ゼルビア所属で、今シーズンで現役を引退した鄭大世氏は、ライト層の声援への感謝をつたえる投稿が話題を呼んだ経験を持つ。「コア層がライト層に向けて攻撃するのを見るのはすごく寂しい。経営的観点から見ればライト層の取り込みは必要で、コア層が『中途半端な気持ちで応援するなら来ないで』と一刀両断してしまったらもう本末転倒だよねという思いでツイートした」と投稿当時の思いを語った。

 日本代表としてワールドカップに出場し、今シーズンで現役を引退したFC今治所属のDF駒野友一氏もこれに同意する。「サッカーを知らなくても、選手の顔が好みでサポーターになったという声も聞く。でもその方が友達を呼んで、また試合を見に来てくれることもある。そうやって繋がってファンが増えていくと思うので、そういう人たちを大事にしたい」

ドイツ戦勝利に列島歓喜!にわかファンはダメ?鄭大世×駒野友一「サポーターの一体感は選手にも好影響」

 プロフュギアスケーターの安藤美姫氏は自身の経験を踏まえ、「自分のコアなファンの方がライト層を攻撃していたり、その結果でファンが広がらないというのは事実すごくある。そのことに、私たち選手は傷ついている」とコメント。「ただ、応援マナーやルールを知らないが故に暴言を吐いたり、失礼な態度を取ってしまっている場合もあし、コアなファンの間での暗黙の了解というのもあると思う。選手へのリスペクトは大切」とした上で、「どうして“にわかファン”を攻撃するのだろう」と質問を投げかけた。

 鄭氏はSNSに注目。「直接は言えなくても、SNS上では言えてしまう。あえて、“にわか”とカテゴライズして批判する対象にして、スケープゴートとする。人間の本能的な部分がそこに表れていると思う」と考察。

ドイツ戦勝利に列島歓喜!にわかファンはダメ?鄭大世×駒野友一「サポーターの一体感は選手にも好影響」

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「スポーツに限らず様々なコミュニティで起こること。しかし、ビジネス的には必ずマイナス成長になってしまう」と別視点から指摘。「古参が新参者を排除すると、どんどん新しい人は入りにくくなる。新陳代謝がなくなればどんどん高齢化して、最終的にダメになるというのはコミュニティの原理原則としてよく言われている。コア、にわか、と分けるのではなく、富士山の形で考えればいい。どんどん登る人もいれば、下がってきてライト層から支える人もいる。新陳代謝が起きるのが大事」と述べた。

ドイツ戦勝利に列島歓喜!にわかファンはダメ?鄭大世×駒野友一「サポーターの一体感は選手にも好影響」

 お笑い芸人のパックンは、「僕はプロ野球のヤクルトファンだが、今はチームが強いので観客も多く『正直ムカつく』ところもある」とコア層の気持ちを代弁。しかし、その中でも「にわかファンに対して『早くコア層に入ろうよ!』という態度で接している。なぜなら、僕もコア層になったのはそういう接し方をしてくれた方たちがいたから。そういう仲間意識を高めるようなファンが、多分球団のためにも個人のためにもなるかなと思う」との見方を示した。

 対立しがちだという古参のファンとにわかファン。選手にとってはどちらも強力なサポーターであることに違いはない。コア層への引き上げと育成について、鄭氏は「山の頂上から引っ張ってあげるみたいなことをしてくれれば全員が幸せ。入り口なんて何でもいい。選手の立場からすれば、勝てば観客は増えるし負ければ減るので、全力で努力する。それでライトなファンが来てくれたら嬉しい、という好循環になる」、駒野氏は「新しいファンの取り込みは必要。応援のルールなどがあるならコア層が新しい層に伝えてほしいし、それがきっかけとなってサポーターも一体化すると思う。そうなれば選手にも良い影響を与えると思うので、コミュニケーションを取ってほしい」と期待を込めた。
(『ABEMA Prime』より)