勝利を手繰り寄せた
FIFAワールドカップ・カタール大会グループEの初戦ドイツ対日本で波乱が起きた。
前半はドイツが日本を圧倒。PKから先制ゴールを奪ったイルカイ・ギュンドアンを中心に日本ゴールを脅かす。しかし前半は1点しか奪えず、後半を迎えるとより攻撃的になった日本が堂安律、浅野拓磨の得点で逆転。世界を驚かすまさかの展開で、日本が大きな勝ち点3を獲得した。
世界中では日本フィーバーが起こっており、得点を挙げた堂安、浅野の顔が海外メディアでデカデカと使われている。堂安は「日本のリオネル・メッシ」と呼ばれており、早くも今大会で評価を上げた。
日本の勝利には彼らのゴールが欠かせなかったわけだが、守備陣の奮闘も忘れてはならない。
前半日本は圧倒されており、何度も権田修一が守るゴールを脅かされた。試合前強みとされていたハイプレスは通用せず、日本は低い位置でブロックを作るしかなかった。そのブロックも有効とはいえず、相手のミスがなければ前半でゲームセットとなっていたかもしれない。
守備陣のキーマンは板倉滉だった。日本代表ではアジア最終予選の終盤から地位を確立し、今大会も先発の一人として考えられていた。しかし9月に左ひざを負傷。カタール行きが危ぶまれていたが、森保一監督は板倉を招集した。
板倉の実力に疑いの余地はないが、不安要素がないわけではなかった。9月から約2ヵ月間実戦から離れており、12日のボルシア・ドルトムント戦で戦列復帰を果たしたが、プレイタイムはわずか2分だった。常人であれば試合勘のなさを露呈しても仕方ないが、親善試合のカナダ戦、ドイツ戦で先発出場。ドイツ戦はフル出場しており、後方からの正確なロングフィードで浅野の逆転弾をアシストしている。
米『ESPN』では「板倉滉の復帰は(ドイツに対する日本の勝利の)重要な役割を果たした」と功績の大きさを讃えている。対戦国であるドイツを日頃から知る守備者であり、対峙するFWはバイエルン・ミュンヘンの選手が多い。少なからず戦い慣れている相手ではあり、板倉の存在は大きかった。
「とてもいい気分だ。ドイツ戦がタフな試合になるのは分かっていたし、勝ててよかった。負けている時でもベストを尽くす。これが日本人。前半で失点したときは精神的に辛かったけど、自分たちの力を信じたので、結果には満足している」
試合後のインタビューでは前半戦の難しさについて語っている。見ている側からすればいつ失点してもおかしくない状態であり、選手はよく耐えた。
現状日本でトップクラスの守備者である冨安健洋は万全の状態ではなく、さらに板倉まで失うことになればこの勝利はなかっただろう。急成長を遂げる選手で、堂安、浅野のようにこの板倉ももっと注目されるべき存在だといえる。