サッカー日本代表は現地時間27日、FIFAワールドカップカタール・グループE第2節でコスタリカ代表と対戦する。コンディションに問題を抱える選手が複数いる中、田中碧や久保建英、三笘薫らの活躍は非常に重要だ。W杯初出場を経た彼らは、コスタリカ代表を崩すイメージを膨らませている。(取材・文:元川悦子【カタール】)
●コスタリカ代表戦はスタメン入れ替えが必須
「史上初のベスト8」という大目標を果たすべく、23日のカタールワールドカップ(W杯)初戦・ドイツ代表戦で好発進を見せた日本代表。しかし27日の次戦・コスタリカ代表戦を落とすようなことがあると、一気に形勢不利となる恐れがある。仮に勝利しても、同日夜にドイツ代表がスペイン代表に勝利すれば、3チームが勝ち点3で並ぶ。最終的に3チームが2勝1敗で並んで得失点差でグループ突破が決まる可能性もないとは言えない。それを考えると、コスタリカ代表には複数得点を奪って白星を挙げるのが理想だ。
こうした中、日本代表は25日からキックオフの13時に合わせ、11時からトレーニングを開始。35度を越える猛暑の中、選手たちは冒頭15分以外は非公開で練習している。2日後の重要な一戦に向けてコンディションを整えた。
だが、ドイツ戦で負傷した酒井宏樹と冨安健洋はこの日も別メニューで、全体練習に加わらなかった。酒井に関しては「次の試合は誰かに託す? 現実的にはそうだと思います」と本人がコメントした通り、コスタリカ代表戦欠場が決定的。冨安も繰り返し痛めている右太ももの違和感ということで強行出場は難しい。日本代表は守備のキーマン2人を欠いた状態で2連勝を目指さなければならないのだ。
加えて、中3日の過密日程だ。それを考えると、スタメンの大幅入れ替えも必須。ドイツ代表戦で同点弾を決めた堂安律、17日のカナダ代表戦で先制弾を挙げた相馬勇紀らが先発濃厚で、ボランチも柴崎岳と守田英正をベースに考えていくべきだろう。
●「今までにない感情が湧いた」と語ったのは…
ただ、守田は左ふくらはぎ違和感から完全回復したと言い切れない部分がある。大会直前の準備期間を使って入念に調整してきた冨安がドイツ代表戦の圧倒的強度でケガを再発させたのを踏まえると、彼の起用も慎重にならざるを得ない。遠藤航もドイツ代表戦で凄まじい負荷をかけており、今後を考えると無理はさせられない。森保監督がドイツ代表戦で途中交代した田中碧を送り出す可能性も皆無ではないだろう。
その田中だが、ドイツ代表と真っ向勝負を演じてみて「シンプルにもっとうまくなりたい」と強く感じさせられたという。
「それこそ前半、圧倒的にボール握られたりもしましたけど、僕らがドイツ相手に圧倒的にボールを握れるチームなりたいと思うし、個人としてもとんでもない選手になりたいなっていうのを感じた。今までにない感情が湧いたのかなと思います」
「そのために必要なこと? 全部じゃないですか。フィジカルもそうだし、技術も頭の中もそう。サッカーはフィジカルが5~6割を占めると思うんで、そこの底上げは間違いなく必要だし、その状況での技術と頭はより高いものが求められる。現時点ですぐにそこに行けるわけじゃないし、1年後にあり得るのかも分からないけど、目指し続けていかなきゃいけないと感じています」
神妙な面持ちで言う田中には、トーマス・ミュラーの捕まえづらいポジショニングも、ヨシュア・キミッヒのゲームメークも、イルカイ・ギュンドアンの高度なテクニックも全て「異次元」に映ったのかもしれない。
●コスタリカ代表をどう崩すか
その世界基準を再認識しつつ、最終的に勝利という結果を手にしたことには大きな価値があった。W杯初戦での貴重な経験を今後にどう生かすかが重要なのだ。そういう意味でも次戦からもう一段階ギアを上げてやっていくしかない。目の前にビッグゲームが控えていることは、むしろ彼にとってはポジティブなことなのだ。
「(コスタリカは)ボランチのところが空くと思っているんで、そこからの背後への動き出しだったり、サイドでの1対1で勝てるかどうかっていうのは重要になってきます。相手も出てくるシチュエーションなので、どこまでドン引きされるか分からないですけど、状況的には考えやすい」
三笘薫は相手の特徴をこのように語っていたが、そういう弱点があるなら田中にとってはやりやすい。中盤でボールをキープして、長短のパスを使いながら揺さぶりをかければ、組織的に連動できないケースのあるコスタリカ代表守備陣は必ず崩せる。球出しに長けた柴崎、川崎時代から息の合ったコンビを見せてきた守田のいずれと組んだとしても、よさを発揮できるはずだ。
「コスタリカからすると、ここで勝ち点3を取らないといけないというのは間違いなくある。引き分けだったら厳しい部分もあるので、最初からギアを上げてくると思います。だからこそ、日本代表は前半から点を取れるようにしないといけない。先にこっちがゴールしないと苦しい展開になるので」と次戦は頭から一気に畳みかける覚悟だ。
●久保建英の鋭い分析「立ち上がりは狙える」
「冷静になって考えてみたら、もしかしたら想定していたコスタリカ戦よりも、日本は速攻が増えてくるかなと思います。長くボールを保持するというよりも、カウンターでパパって攻めていく試合になるかもしれない。
「特に相手は最初から前に出てくると思うので、日本には前半からチャンスが来る。立ち上がりは狙える。日本は前線に速い選手が多いので、そこで入れ替わりじゃないですけど、出てきたDFラインの背後をついていくことが大事かなと思います」
久保建英は鋭い分析をしていた。田中が中盤に入るのであれば、普段以上に縦の意識を高めながらプレーすべきだろう。
前線に上田綺世、堂安、相馬、久保建英ら東京五輪世代が数多く入る可能性も高いだけに、スムーズな連係が期待できる。田中自身もやりやすいはず。そういったプラス要素も生かしながら、勝ち点3を確実に奪ってほしい。本気でベスト8を取りに行こうと思うなら、2戦でグループリーグ突破を決め、1位通過への体制固めをすることが最善の道だ。
高い領域を貪欲に追い求める日本代表と田中の一挙手一投足を楽しみに待ちたい。
(取材・文:元川悦子【カタール】)