今大会の日本代表はそもそもの平均年齢が高いチーム

 カタール・ワールドカップ(W杯)のラウンド16で敗退した日本代表は、12月7日に森保一監督やキャプテンのDF吉田麻也らが帰国した。会見の席で森保監督は「ベテランがチームを支え、若手が躍動する。チーム一丸となって活動している姿を見せることができて、選手たちにはありがたく思っている」とコメントしたが、少し違和感が残った。

 森保監督は、日本の若者に頑張ってもらいたいという意図から、この発言をしているため、あまりくさすものでもないのかもしれないが、若手が力を発揮できた大会だったとは思えないからだ。

 まず若手の定義が難しいのだが、この言葉の前についた「26人中19人がW杯で初めての経験をする」という言葉から、W杯経験がないということを「若い」と捉えると森保監督の発言に違和感はない。だが、サッカー選手としての年齢を考えると、クロアチア代表戦でゴールを決め、ハイプレスを支えたFW前田大然(セルティック)、攻撃の切り札となったMF三笘薫(ブライトン)や堅守を見せたDF板倉滉(ボルシアMG)は25歳で若手という言葉は当てはまらない。

 MF堂安律(フライブルク)やMF田中碧(デュッセルドルフ)、DF冨安健洋(アーセナル)も24歳で、原稿を書く際に「若手」という言葉を使うには躊躇する年齢だ。すんなり若手と呼べるのは、21歳のMF久保建英(レアル・ソシエダ)くらいだ。

 データサイト「Statista」によれば、日本代表の平均年齢は27.8歳。これは28.9歳のイラン代表、28.5歳のメキシコ代表、27.9歳のアルゼンチン代表とブラジル代表に続く数字で、W杯出場国全体ではベルギー代表、チュニジア代表、ウルグアイ代表、韓国代表と並び4番目に高い数字だ。前回大会の28.3歳に比べれば若くなってはいるが、そもそもの平均年齢は高いチームなのだ。

 24歳以下の選手のパフォーマンスを見ると、ドイツ代表戦、スペイン代表戦でゴールを挙げた堂安の活躍は目覚ましく、田中もスペイン戦で貴重なゴールを挙げるなど、怪我明けながらも奮闘した。また、本人は全く納得していなかったが、冨安も出場した際には安定感のある守備で後方を支えていた。

 だが、24歳のFW上田綺世(セルクル・ブリュージュ)、久保は自分の持ち味を発揮できないままで大会を終えたし、追加招集となった23歳のFW町野修斗(湘南ベルマーレ)は出場機会を掴めないまま、大会を終えた。前線の選手で活躍できたのは堂安くらいで、ほかの選手たちは悔しさを胸に、それぞれの日常へと戻っていくことになっている。

 実際に「若手が躍動できた」と言える活躍を見せたと判断するかどうかは、改めて検証が必要だと感じる。だが、同時にこうした選手たちに乗り越えるべき壁を示せたことは、4年後に向けて重要な意味を持つ種まきにもなったと感じる。前半は我慢という戦い方を強いられたチームのなかで、自身の持ち味である攻撃面でのタレントを発揮できなかった久保やコスタリカ戦の45分間、ほとんど何もさせてもらえなかった上田が、中堅となる4年後にはチームを引っ張っていく存在になることが期待される。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)