【識者コラム】今大会でW杯デビュー、活躍が目立った7人をセレクト

 カタール・ワールドカップ(W杯)は、グループリーグ第2節へと突入。前評判通りのパフォーマンスで存在感を放つ選手、あるいはその逆で、ノーマークながら驚きの活躍を見せたプレーヤーもいた中で、ここでは今大会でW杯デビューを飾った選手のうち、活躍が目立った7人をピックアップして紹介する。

■MFジュード・ベリンガム(イングランド代表/ボルシア・ドルトムント/19歳)

 グループ初戦では中盤で躍動し、6-2でイラン代表に大勝した立役者となった。5バックのイランに対して、中盤のパスワークからするすると駆け上がり、DFルーク・ショーが上げたクロスに合わせてゴールラッシュの口火を切る先制点を奪取。CKでリードを広げたイングランド代表の3点目はカウンターからベリンガムが巧妙につなぎ、FWハリー・ケインのアシストからFWラヒーム・スターリングのゴールとなった。効果的なフリーランでFWブヨコ・サカが決めた4点目にも間接的に関与したプレーも見事と言えるだろう。開催国として優勝した1966年大会以来、フットボールの母国に優勝をもたらせるか。

■DFテオ・エルナンデス(フランス代表/ACミラン/25歳)

 アンダーカテゴリーの代表で主力を担ってきたが、A代表では兄のリュカ・エルナンデスがいることから、ルーツであるスペイン代表を目指すことも噂された。しかし、昨年A代表デビューを果たし、晴れてW杯のメンバー入り。オーストラリア戦で先発したリュカのまさかの負傷により、前半13分から急遽投入された。このアクシデントにも動揺することなく相手の仕掛けを封じると、CKのセカンドボールから良質なクロスでMFアドリアン・ラビオの同点ゴールをアシスト。その後も安定した守備、ビルドアップ、縦の攻め上がりで4-1の逆転勝利を支えた。右膝前十字靭帯断裂と発表された兄の無念を晴らすべく、連覇を目指すフランス代表の左サイドを支えることになりそうだ。

■MFガビ(スペイン代表/FCバルセロナ/18歳)

 コスタリカ代表に7-0で勝利したスペイン代表で18歳のMFが躍動した。バルセロナの同僚MFセルヒオ・ブスケツ、MFペドリと中盤のトライアングルを組んだガビは、FWダニ・オルモとのコンビネーションで先制点を演出すると、3-0で迎えた後半に今度はFWフェラン・トーレスとの見事なコンビネーションから4点目をアシスト。チームの5点目はFWアルバロ・モラタのクロスに右足ボレーでコスタリカの名手GKケイラー・ナバスを破った。抜群のテクニックはもちろん、味方とビジョンを共有し、ゴールの起点にもなれるセンスにも注目だ。

エクアドルは伊東純也の元同僚が躍動、カナダの破壊力抜群サイドアタッカーも必見

■DFアンジェロ・プレシアード(エクアドル代表/ヘンク/24歳)

 MF伊東純也の元同僚としてよく知る人もいるかもしれないが、右サイドから躍動的な仕掛けを見せてエクアドル代表の攻撃に鋭さを与えている。MFモイセス・カイセドを起点に、FWエネル・バレンシアのゴールをアシストしたグループ初戦(対カタール)のクロスは絶妙なタイミングと精度だった。エクアドルは左のDFペルビス・エストゥピニャンがイングランド1部ブライトンでMF三笘薫の同僚で、日本のサッカーファンとしては馴染み深い存在だろう。両翼のアップダウンを見ているだけでも面白い。

■FWヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル代表/レアル・マドリード/22歳)

 グループ初戦のセルビア代表戦で2得点に絡む活躍を見せ、セレソンを好発進に導いた。1点目はFWリシャルリソンのゴールにつながるシュート、2点目は絶妙な右足アウトの浮き球パスをリシャルリソンへ合わせた。ボールを持つたびにワクワクさせてくれる選手だが、オフの動きもしっかりしているので、FWネイマールやFWラフィーニャらと息の合ったコンビネーションは特筆もの。何よりボールを持ったところからの加速力はフランス代表FWキリアン・ムバッペと双璧を成し、クイックターンでセルビアの屈強なディフェンスを翻弄していた。ネイマールの負傷で先行きが危ぶまれるブラジルだが、攻撃に関してはヴィニシウスが中心になることは間違いない。

■GKアンドリエス・ノペルト(オランダ代表/ヘーレンフェーン/28歳)

 オランダ1部ヘーレンフェーンの下部組織から昇格し、なかなか出番がないまま下部リーグを転々。控えGKも経験しながら今夏に復帰を果たすというだけでも素晴らしいが、さらに代表抜擢でスタメンまで勝ち取った。世の第2、第3GKへ勇気を与えるストーリーだが、パフォーマンスにも説得力がある。28歳での代表初キャップがW杯の初戦という苦労人は、安定したセービングでグループ初戦のセネガル戦でクリーンシートを達成しただけでなく、長短のパスで攻撃のリズムを作った。グループ2試合目のエクアドル代表戦でもチームのパフォーマンスが良くないなかで奮闘。失点シーンはキックミスが間接的に絡んだが、さらに注目していきたい選手だ。

■FWタジョン・ブキャナン(カナダ代表/クラブ・ブルージュ/23歳)

 本番前のテストマッチでも日本に脅威を与えたサイドアタッカーで、ブンデスリーガで多くの猛者と対戦経験のあるDF伊藤洋輝も「速かった」と感想を語る。しかも183センチのサイズがあり、流れの中でスタートを切るタイミングも良い。グループ初戦でベルギー代表に敗れたが、チャンスの数で大きく上回る健闘を見せたカナダ代表にあって、3-4-3の右ウイングから仕掛けのスイッチになっていた。左サイドには大黒柱であるMFデイビッド・ホイレットとFWアルフォンソ・デイビスがおり、攻撃の起点が左サイドになりやすい分、右から飛び出してくるブキャナンはかなり破壊力がある。クロアチア代表、モロッコ代表との試合で勝利に導く活躍ができるか。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)