【識者コラム】あとがないコスタリカとの一戦、相手の出方を見極められるか
日本代表が強豪のドイツ代表に2-1の逆転勝利した一方で、コスタリカ代表はスペイン代表を相手に7失点。頼れる守護神ケイラー・ナバスを持ってしても、その流れを止めることはできなかった。失点もさることながら、シュートを1本も記録できなかったというのはスペインとの実力差を加味してもイレギュラーで、チームも躍進を期待したコスタリカ国民もショックだろう。
「初戦では0-7という大敗をしましたが、だからこそコスタリカが我々との戦いにかけてくるということ、そして敗戦の後のリバウンドメンタリティーとしても非常に強い気持ちを持って、我々に対して戦いを挑んでくると思います」
森保一監督はそう語ったが、やはり堅守速攻で知られるコスタリカが、この大敗を受けてどういう出方をしてくるか、そこに日本がどう対応していくかがキーポイントになる。前日会見で4-4-2からのシステムチェンジを否定しなかったスアレス監督。5バックはスペイン戦でも途中から使っているが、2014年ワールドカップ(W杯)でベスト8進出のベースになった5-2-3(攻撃時には3-4-3になる)で来る可能性もある。
ドイツ戦は前半45分のみで交代したMF久保建英はコスタリカ戦でもスタメンの可能性がある。その久保は「相手はあとがないなか、たぶん前から結構来ると思うので。どちらかというと1試合目の前半とか後半の立ち上がりのように、カウンターが日本代表は増えるのかなと思う」と予想する。基本的には堅守速攻のベースを崩さずに、素早い攻撃の中で縦の矢印を強めることが想定しやすいが、先入観にとらわれすぎて、予想と違った時にバタバタするのは一番まずい。
コスタリカの出方というのは個々が見極めるだけでなく、すぐにコミュニケーションを取って共有しておかないと、対応がバラバラになって破られてしまうリスクもある。
日本はおそらくドイツ戦の前半と同じ4-2-3-1で、守備時には4-4-2になるが、コスタリカがロングボールを蹴ってくるのか、うしろからつないでくるのかというのも早い時間帯で見極めて、ピッチ内で共有していきたいところ。スタメンの可能性もあるMF相馬勇紀はコスタリカが、スペインに対して「結構センターバックから蹴り込んでいた印象だった」と語る。
そこのロングボールには警戒をしながら「逆にサイドバックに入った時はハメどころでチャンスだと思うので、狙っていきたい」という。つまり相馬の担当エリアになるサイドの高い位置でコスタリカの攻撃を規制したり、うまくボール奪取につなげられれば、得意のショートカウンターに持ち込むことができる。
ベネット&トーレスは高い推進力を発揮、守備のリスク管理も重要に
ロングボールを蹴られても、中央であれば日本のセンターバックが跳ね返せるが、コスタリカはサイドに左利きの俊英MFジェウィソン・ベネットやMFゲルソン・トーレスがおり、フリーランでもドリブルでも、高い推進力を発揮してくる。彼らにスペースでボールが渡ってしまうと厄介だ。おそらく右サイドはMF堂安律とDF山根視来のコンビになるが、攻撃だけでなく守備のリスク管理も重要になる。
「(ベネットは)左利きの選手なので、縦にクロスを上げさせると、事故が起きてしまう可能性が高くなってしまう。そこのケアのところは相手のサイドバックが空いてくるタイミングを含めて(堂安)律と2人で見ながら。(伊東)純也くんが入ってもそうだと思いますけど、対応していきたい」
山根はそう語る。ただ、18歳のベネットはドリブルこそサイドを縦に仕掛けてクロスを上げにくるが、オフ・ザ・ボールでダイアゴナルに中央に走り込んで、フィニッシュに絡むプレーも得意としている。ボックス内の決定力は本職のストライカー顔負けだ。そこに山根が付き切るのか、センターバックに受け渡すのか。そうしたところも見極めながら、コスタリカの出どころを封じたい。
森保監督は「第1戦を踏まえたうえで、非常に難しい試合、厳しい試合になるということを覚悟して臨まなければいけないと思います。我々のスタンスとしては、目の前の一戦に最善の準備をする。そして、その試合で自分たちの力を出し切って、ベストを尽くして戦い抜く」と語る。
勝利した次の試合で、なかなか勝てていない歴史はあるが、死に物狂いで勝利を目指してくる相手をきっちりと仕留めて、当日の夜に大一番を迎えるスペインとドイツにプレッシャーをかけたい。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)