[カタール・ワールドカップ・グループステージ第2戦]日本 0-1 コスタリカ/11月27日/アフメド・ビン・アリー・スタジアム

 カタール・ワールドカップのグループステージ第2戦でコスタリカと対戦した日本は、唯一の枠内シュートを決められ、0-1で敗れました。

 コスタリカは第1戦でスペインに0-7で敗れていて、そのダメージが確かにあったと思います。自分がプレーヤーとしてやっていた時にも、大敗した直後のゲームでは、先に失点してしまう状況が続くと、「まただ」と意識し、ダメージというかショックが大きかった思い出があります。

 今回のコスタリカも、そういう精神状態の不安定さが見られたなか、前半の日本の攻撃が単調だったことで、精神的なストレスも少なかったはずです。

 次第に、コスタリカがメンタル面で自信を取り戻してきて、最後は僕たちがイメージする、コスタリカの堅い守備ができていました。身体を張って守って、最後はGKのケイラー・ナバス選手が止めるというリズムが蘇ってきていました。

 コスタリカにとっては、自分たちの立ち返る場所に戻れたことで、腹を括った戦いができて、最後の得点にも繋がった。そういうコスタリカに日本が戻してしまった。

 コスタリカは後半から守備のリズムが良くなり、攻守にアグレッシブさが出て、ペースを掴みました。
 
 森保ジャパンは身体も重かったように感じます。

 理由は様々あると思いますが、今回のワールドカップで他のグループを見ていても、第2戦までで連勝できたのはフランスだけ(11月28日時点)。

 負ければ敗退が決まる可能性もあるチームは、崖っぷちの戦いで出力を上げて必死に戦ってきています。

 日本に緩みがあったわけではなく、コスタリカが日本を上回る覚悟があったのでしょう。他のグループを見ていても第2戦の難しさは感じますね。

 以前までの大会ほど圧倒的な力の差がなくなっているようで、それは選手たちも感じていることでしょう。サウジアラビアがアルゼンチンを倒したり、日本がドイツに勝ったり。また、ヨーロッパのネーションズリーグの試合を見ることができたり、情報があることで違ってきているのかもしれません。

 そうしたなかで、日本はどうすれば良かったのか? 日本は前半から“やっぱりダメだ”とコスタリカに思わせるような、高い位置からプレスをかけて、セカンドボールを回収して相手を押し込んだ戦いができれば良かったのでしょう。

 もちろん9月のアメリカ戦のような、前線からのプレスをハメる戦いを目ざしてやっているとは思うのですが、技術的なミスや、プレーの強度、質が低調でそれは実現しませんでした。

【PHOTO】カタールW杯のスタンドを華麗に彩る“美しきサポーターたち”を厳選!
 
 スタメンの人選では、攻撃的でクオリティの高い選手を使うという手もあったかもしれません。例えばパス出しに長けた柴崎岳選手を、変化を加える意味で途中から起用しても面白かったはず。いろんな意見があると思います。スタメンをターンオーバーしたことについてや、怪我明けの守田英正選手のフル出場など。守田選手も悪くはなかったですが、今までのプレーを考えれば、まだ本来のパフォーマンスが戻り切れていなかったと思います。

 それでも勝っていれば、この試合で守田選手を起用できたことがメリットにもなりますし、初戦で出場できなかった選手を試せたという収穫にもなります。

 大会全体を見ていても総力戦が必要で、コスタリカ戦のスタメンの選択はある程度、支持できるものだと思います。

 唯一、戦前から指摘されていたFKなどのセットプレーには物足りなさが拭えません。後半にあれだけゴール付近でFKのチャンスがあったなか、得点の匂いはしなかったですね。相手に脅威を与えられていれば、セットプレーを与えてはいけないというプレッシャーもかかります。そこに関しては今後も課題となるでしょう。

 詳細を見ていくと、どうしても“たら・れば”な話になってしまいます。ですが、まだスペイン戦が残っています。今回コスタリカに敗れたという結果は変わりませんが、グループステージが終わってみれば、この試合の意味や捉え方はずいぶんと違ってくる可能性があります。
 
 今、試合後に感じている意味と、今大会すべてを通して見た時の意味では違ってくる可能性があります。

 今後、怪我明けの守田選手をフル出場させて良かったと思えるかもしれませんし、次戦で交代出場から上田綺世選手や、相馬勇紀選手が活躍すれば、この試合で試した効果も出てきます。

 ワールドカップの大会期間中でも成長し続けなければいけないですし、その成長から得られたものを次で表現しなければならない。このコスタリカ戦があったからこそ、という大会にしてほしいですよね。そのチャンスは最後のスペイン戦で残されています。

【著者プロフィール】
市川大祐(いちかわ・だいすけ)/1980年5月14日、静岡県出身。現役時代は日本代表の右サイドバックとして活躍したクロスの名手。1998年に17歳でA代表デビューすると、2002年の日韓W杯でも活躍。アカデミー時代から過ごした清水ではクラブ歴代3位となる325試合に出場した。2016年に現役引退後は指導者の道に進み、現在は清水エスパルスジュニアユース三島U-13監督として活躍中。さらに、ワールドカップ期間中は、日本戦をニコ生で徹底分析! アナリストとともに戦術・フォーメーションなどにフォーカスにした解説放送を行なう。